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第1級海上特殊無線技士挑戦記 [資格]

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 筆者が1級小型船舶操縦免許を取得したのは既に述べた。その試験日での出来事。試験日1週前に一緒にボートの操縦練習をした男が「第一級海上特殊無線技士」を持っているという。彼は趣味でマグロを釣っているのだが、その船のレーダーを扱うのに必要な資格なのだという。5万円ほどの費用で何日間か講習を受けて取得した。今回は操縦もしたいので船舶免許を取得しに来たのだと言っていた。
 そうか。船舶免許に海上特殊無線は付き物なのか。確かにレーダーを操作できないと大海原で往生することになる。よしこの資格も取ってみよう。動機はそんなところであった。
 第一級海上特殊無線技士は大学で履修した単位によっては、科目免除の特典がある。筆者は電気関係の大学を出ているので、もしかすると対象になっているかもしれないと調べてみた。その結果「電波法規」という科目を履修していなかったために科目免除は適用されないことがわかった。
 やっぱり世の中は簡単に楽はできないものだと自笑しつつ、本屋へテキストを探しに行く。
 携帯電話もインターネットもなかったころ、アマチュア無線の需要が高かった。90年代前半まではクルマに無線機を積んで会話を楽しむ人が多くいた。だから本屋にはそのテキストが何冊も並んでいたものだ。しかし今はあることはあるのだが、数冊しかなく、ほとんど選ぶには苦労する必要がないくらいだ。逆に幅を利かしているのは、特殊無線技士だ。特殊無線技士は陸上、海上、航空とあり、陸上と海上はそれぞれ第1級、第2級がある。第1級陸上特殊無線技士は携帯電話の基地局で必要となる。これは他の特殊無線に比べて難度が高い。本を開いてみると難しい数式が並んでいる。しかしそれ以外の特殊無線技士は1冊にひとくくりにまとめられている。それぞれの級別にまとめられているのだが、問題は陸上、海上、航空ほとんどどれも同じで、数問それぞれの特殊分野の問題が出ている感じだ。その本屋には特殊無線技士の問題集はそれしか置いていなかったので選択の余地がなくそれを購入した。
 第一級海上特殊無線技士の試験問題は電波法規、無線工学、電気通信術、英語となっている。
 買ったテキストを開いてみると、「問題は過去問が繰り返して出題される」「簡単な計算で求まる平易な問題」などと書いている。つまりとても簡単なのだ。これを見る限り、科目免除は大学に手続きに行くだけ無駄だと感じてしまった。
 受験申し込みはインターネットで可能だが、受験料の振り込みは郵便振り込みのみでクレジットカードは対応していない。国家試験の受験料納付は郵便振り込み、収入印紙が主流である。

【電波法規と無線工学】
 電波法規と無線工学はその8割はアマチュア無線4級とほとんど同じだ。いやもしかするとそれよりも簡単かもしれない。残りの2割は海上無線特有のコールサインやレーダーの操作方法だ。それは知らなければ答えることは不可能だが、理屈を考えなくても、「そういうもんだ」と記憶しておけば間違えることはない。
 全体としては過去問丸出しで、引っかけもひねりもない。たまに新規の問題も出ているようだが、合格とされる正答率が60%だから、過去問さえきっちりやっておけば不合格になるおそれはない。
 先日、民間資格のアロマテラピー検定1級を受けて、1級にしては簡単すぎると感じたが、それでも覚えることは多かった。しかしこの特殊無線技士は総務省が管轄する国家資格である。これがないと仕事ができない、いわゆる「士」とつく資格である。それにも関わらず、おそらく運転免許よりも簡単な試験。おそらく第一級○○士の資格では日本一簡単ではなかろうか。
 とにかく勉強法としては過去問を繰り返してやった。やっているうちに問題を見ただけで、「パブロフの条件反射」のように答えがわかるようになった。

【電気通信術】
 平易な学科に比べ、この電気通信術はやや特殊だ。決して難しくはないのだが、訓練が必要なのである。電気通信術と言っても、電信すなわちモールス信号の送受信をやるわけではない。モールス信号はもはや軍隊と極まれに漁業無線に使われるのみで、それも常用しているのは無線ではなく発光信号ぐらいではないだろうか。ここでいう電気通信術は電話送受信である。電話と言っても、NTTや携帯電話ではない。無線での音声通話のことである。
 携帯電話はディジタル化されて音声がかなり明瞭になったが、アナログ時代はそうではなく、かなり聞き取りにくいことがあった。海上無線も同様である。そこで情報を確実に伝えるために「通話表」を用いることになる。日本語ならアを「朝日のア」とかイを「イロハのイ」という風にである。この海上特殊無線では英語の通話表を用いて、その送受信試験が行われる。英文の通話表は以下のようになっている。

A ALFA (アルファー)
B BRAVO (ブラボー)
C CHARLIE (チャーリー)
D DELTA (デルタ)
E ECHO (エコー)
F FOXTROT(フォックストロット)
G GOLF (ゴルフ)
H HOTEL (ホテル)
I INDIA (インディア)
J JULIETT (ジュリエット)
K KILO (キロ)
L LIMA (リマ)
M MIKE (マイク)
N NOVEMBER(ノーベンバー)
O OSCAR (オスカー)
P PAPA (パパ)
Q QUEBEC (ケベック)
R ROMEO (ロメオ)
S SIERRA (シエラー)
T TANGO (タンゴ)
U UNIFORM (ユニフォーム)
V VICTOR (ビクター)
W WHISKEY (ウィスキー)
X X-RAY (エックスレイ)
Y YANKEE (ヤンキー)
Z ZULU (ズル)

 これは国際機関で定められているので、旅行業界で広く使われているような、LをLONDONといったり、CをCHINAと言ったりすると減点になる。
 受信はランダムに発生された英文字を5字を1語にして、3分間聞き取って書きとる。送信は逆に紙に書かれた英文を通話表を用いて発声し、目の前の試験官が聞き取る。
 さて練習だが、まずは受信ができないことにはどうしようもない。パソコンのフリーソフトに練習用のソフトが存在する。さっそくダウンロードしてやってみる。
 実は筆者は電気関係の大学の出身で、「通信実技」なる科目が存在した。主として和文モールスの受信だったが、たまに講師の気分次第で和文電話受信もあった。そのあまりの速さは最後の方は書き取れなかったものだが、この特殊無線はその時より遅く、かつて養った技術で対応できそうであった。
 難しいのは日本語では同じ音となるCとS、KとQ、BとV、LとRだろう。通話表ではCはチャーリー、Sはシアラ、Kはキロ、Qはケベック、Bはブラボー、Vはビクター、そしてLはリマ、Rはロメオである。シアラと聞いてCと書いたり、ケベックと聞いてKと書くのはやってはいけないミスだが、「どっちかな?」と迷っていると、次の語が聞き取れなくなるのである。これは送話でも同様である。これに関しては何度も訓練を繰り返すしかない。
 この受信訓練で活躍したのはブギーボードである。これは電池を内蔵した液晶ボードで、ボタン一つで一瞬にして消える優れものだ。電池は交換できないが、3万回の消去に耐えるという。そのころには液晶の方が落下などで割れているだろう。
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↑左が買ったテキスト 右がブギーボード

 送話は一人で黙々と通話表を朗読した。試験官を前にすると緊張するから、本番さながらに、誰かに聞いてもらえばいいのだが、まあそこまでしなくてもいいと考えた。

【英語】
 学科は過去問丸出しで簡単、電気通信術は訓練さえすれば大丈夫。そんな簡単な第1級海上特殊無線技士の合格率が55%台と存外低いのは、この英語のせいだろう。ちなみに英語と電気通信術のない第2級海上特殊無線技士の合格率は85%という。
 設問は5問だけ。
①I hear you are going to enter Honolulu. How often do you usually call there in a year?
②I understand that you are proceeding to us. Please get here as quickly as possible.
③You are in charge of a fishing boat. When did your career as a captain begin?
④This is Yokohama Maru. The rain seems to be getting heavier. When can you dinish loading?
⑤You are flying the flag of Panama. Do any of your crew come from Panama?

 設問に対する適切な回答を4者択一で選ぶ。見ての通り、高校英語を経験した人ならば、意味は簡単に理解できるだろう。問題は聴き取りである。ポイントは海事用語と文頭の疑問詞である。船をshipというのは誰でも知っているだろうが、convoyが船団、を意味することは知らない人が多いだろう。しかしこの試験では海事英語がポイントになるので、是非とも覚える必要がある。

●重要な海事英単語
intention 意志
propulution 推進
collide with 衝突する
injured person 負傷者
on fire 火災の
so far 今のところ
hold 船倉
toxic 有毒
drag 走錨する
dredge 錨を引く
embark 乗船する
prohibit ~ ~を禁止する
slack たるむ
tight ピンと張る
defective 壊れた
converge to~ ~に一致する
diverge from~ ~から離れる
 いかがでしょう?あまり聞き馴れない単語ではないだろうか。
 文頭の疑問詞、What,When,Whereは何、いつ、どこを意味し、Do、Canなどは「~しているか」とか「~できるか」という意味する。そんなのは中学校英語の知識で誰でも知っているだろう。しかし英語のリスニングに馴れていない人は、この文頭の語を聞き逃してしまう。日本語と違い英語は最初に主語、動詞が来て、あとはモロモロの付け足しだが、日本語は最後に動詞が来る。すなわち英語は文章の前がの方が重要で、日本語は逆に後ろの方が重要なのだ。つまり英語は語頭とその次の動詞を集中して聴き取る必要があるのだ。社会人になってから英語の勉強を全くしたことがなく、この試験を合格目指す人は、この二つのポイントを重視することだ。
 幸い筆者の場合、英語の勉強はずっと続けており、リスニングに関しては海外旅行に多少支障がある程度にできていた。だからといって楽勝だったわけではなく、やはり海事用語には面食らった。
 具体的な勉強法としては「春山海事法務事務所」のサイトに海上特殊無線の過去問があり、そこの英語音声を再生していった。
http://haruyama.info/?page_id=63
↑URL

5問中1問正解という情けない問題もあった。しかし何度か繰り返しているうちに8割は正解するようになった。この英語に関しては過去問丸出しという感じではなく、ある程度の変化はあるようだが、それでも対応できそうな気がした。
 結局、この試験で買ったのは前述のテキストだけで、海事用語などはインターネットに散在している情報を集めた。

【試験当日】
 2014年6月5日、ついに試験日を迎えた。これほど万全の準備をして資格試験を受けるのは経験のないことであった。しかしそう思ったのは試験前日まで。当日になると急に臆病になり、英語の海事用語集など開いたりした。恥ずかしい話だが筆者のTOIECの点数は400から500点でしかない。不安になるのは仕方がないだろう。「世の中の心配ごとの9割は起こらない」というが、それを信じるしかない。
 ところでこの試験は水曜日に行われる。一般的な会社員にとっては休暇を取らないといけないので迷惑な資格試験だ。しかし休みを取ったからこそ、絶対合格しないといけない。そんな重圧が不安にさせたのかもしれない。
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↑試験会場入口
 試験は午後1時開始。試験会場は大阪天満橋にある無線協会の会議室だ。会議室というよりも試験用の部屋という感じ。わざわざ大学や高校の教室を借りる必要もないほどの受験者数なのだろう。
 雑居ビルの11階に上がる。受験者は11人。女性が一人いる。ざっと受験者を見た感じほとんど「海上特殊無線」と縁のない顔つきだ。悪くいえば資格ヲタクである。唯一作業服で受験している人がいて、この人はたぶん仕事で必要なので取りに来たように思える。彼は私と同じテキストを持っていた。親近感を感じる。他の人はイヤホンを耳にしている人が多い。おそらく英語のリスニングの耳慣らしをしているのだろう。
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↑試験会場
 試験は電気通信術の受話、英語、学科、最後に電気通信術の送話となる。
 受話はまずはAからZまで読み上げられる。ちょっとネイティブぽく発音されて戸惑う。ケベックなんかは特に感じた。試験会場は11階にあるので、街の雑音は聞こえない。静かだ。
 筆者は第3級アマチュア無線の資格を持っている。その頃は1分25字のモールス受信が課せられていた。その時の緊張感を思い出した。試験が始まった。とにかく他人の鉛筆の音を気にせず、CDラジカセのスピーカーの音に集中すること。3分後、試験用紙に文字が埋まったところで、試験終了。どんな問題だったのかは覚えていない。しかし聞き漏らしはなかったのでおそらく満点だろう。
 次は英語である。これも最初に耳慣らしがある。問題は5問。解答用紙が配られる。この時回答の選択肢を読んでおいて、質問を類推する。こういったリスニング問題では欠かせないテクニックだ。第1問が読み上げられる。「今回の台風は何個目だ」というような質問だった。about Threeそれしかなかった。読み上げれてから30秒しか考える時間がない。残りの4問も無事に終了。英語だけに自信満々とはいかないけど、合格点の3問は正解していると思われた。
 続いて無線工学・法規だ。まさに過去問丸出し。パブロフの条件反射のように解答できた。満点を確信。時間にして15分。30分経過しないと退出できないので、時間を持て余した。問題は持ち帰ってもいいことになっている。筆者は丁寧に持ち帰ったが、前の男は机に置いていった。あとで見直す必要もないほど簡単な試験問題だったいうわけである。
 しばらくして全員が退席したので、予定を繰り上げて電気通信の送話試験が行われた。会場の後ろのテーブルが即席の面接席となり、2人の試験官が交互に受験番号順に呼び出す。机に置かれたランダムな5字1語の英文を読み上げる。筆者は苦手のQケベックでどもったものの、ほぼ合格水準であった。その送話に関しては、むしろ他の人の方が上手かった。特に女性はほとんどどもることがなかった。ただ5文字ごとにスペースに間を空けるように注意されていた。苦戦していたのは仕事で必要性があると思われた作業服の男である。ちょっとこれでは合格できないのでは、と思われる水準だった。練習をしていなかったのでないだろうか。
 こうして試験が終わった。英語以外は満点を確信している。抜群の手応えであった。

【合格発表】
 合格発表は1ヶ月後の7月5日とされているが、それ以前に問題の解答がウエブサイトに発表される。試験の1週間後、ややおそるおそるPDFファイルをダウンロードする。天晴れ、英語は5問全問正解だった。無線工学はわざわざ見るまでもない。資格試験で満点なんて初めてではないだろうか。そんなに簡単に取れるのだから自慢にも何にもならないし、満点だからといって表彰されるわけでもない。
 自己満足感に満たされながら正式な合格発表を待つ。
 そして7月5日、合格通知のはがきが届いた。検定であれば合格証が同封されていてそれで終わりなのだが、こういう○○士のような免許は発行手続きが必要である。葉書にはウェブサイトから申請手続きをするようにかかれている。詳しいことは何もかかれていない。無線協会各支部に電話をいただければ有料で手続きを代行するとある。もうこの世はインターネットがなければ、不利な扱いを受けてしまう。時代の流れだ。
 こういう国家試験の場合、面倒なのは収入印紙で手数料を納入しなければならない点だ。収入印紙ならコンビニエンスストアーで売っていると思われる人もいるだろうが、ほとんどのコンビニは需要のある200円以外の印紙を置いていない。今回のように2450円となると、郵便局で購入するしかない。もちろん200円13枚貼ってもいいが、過剰分の150円は返ってこない上に、過払い了承済みなどと判子を押さないといけない。幸い近くに24時間開いている中央郵便局があるので会社の帰りに買ってきた。
 この免許申請は所定の用紙に写真を貼り、収入印紙を貼って、住民票を添付し、簡易書留等の料金を貼った返送用の封筒を入れて、受験した無線協会まで簡易書留で送る必要がある。幸い、筆者はアマチュア無線の資格を持っているので、その免許証番号を記入することで住民票は省略できる。
 それにしても面倒な手続きである。平日しか開いていない特定郵便局しか近所にない独り者などはどうやって手続きするのだろうか。
 ところで返信用封筒には簡易書留等とある。等と付いているのなら簡易書留でなくてもいい。確実に配送されるのがわかればいいのなら簡易書留よりも料金の安い特定記録で送ってやろう。特定記録とは窓口引き受けで受付番号をもらい、届け先のポストに投函する。差出人は受付番号で投函されたかどうか確認するというものである。簡易書留のように手渡しではない点で安全性は低いものの、差出人が追跡できるという点では普通郵便に勝っている。しかしクロネコのメール便は標準でこの機能を持っている。メール便は信書が送れないことになっているが、何が信書なのかわかっていない人も多い。メール便が使われるわけである。
 待つこと一ヶ月、ようやく免許証が届いた。アマチュア無線のようにパウチでなく、クレジットカードのようなプラスチックカードになっている。日本の象徴富士山と桜のホノグラムが施されている。おかげで写真がぼやけて見えるのが難点である。
 こうして免許を手にすることができた。試験問題は簡単であったが、とにかく手続きが面倒で仕方のない試験であった。おそらく一生船に乗ってレーダーを操作することはないだろうから、まさに飾りものにしかなからない。でも簡単に資格が手にはいるのは魅力だ。第2級陸上特殊無線や航空特殊無線は同じような問題で、同日受験が可能みたいだから次はそれをねらってみようと思う。
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なんでも好奇心

電気通信術の試験がどんなものか分からず困っていたので、大変助かりました。ちょっと、甘くみていたみたいです。
2月3日まで、残り少なくなってきましたが、頑張ってみます。
by なんでも好奇心 (2017-01-15 11:07) 

umayado

なんでも好奇心さん

コメントありがとうございます。もうすぐ試験ですね。頑張って下さい。Hの「ホテー↑ル」とQ「ケベッえク」に要注意ですよ。
by umayado (2017-01-26 21:46) 

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