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私は如何にしてクルマに乗るのをやめてバイクに乗るようになったか~バイク盗難対策~ [バイク]

 折りたたみ式のミラーに交換してまで、自宅の駐輪スペースにバイクを停めることに拘っていた筆者だが、結局そこには停めないことにした。理由は狭い、面倒くさい、雨に濡れるという点である。狭いのには正直閉口した。たとえミラーを畳んでいても、垂直に下りる樋を避けながらハンドルを切るのは至難の業であった。またアドレスの飛び出たマフラーカバーを、駐輪スペースの前に停めているクルマに擦らずに、バイクを押して進むのは並大抵でなかった。駐輪スペースには屋根がないので、カバーを掛けるのは仕方がないとしても、雨の日にその作業をするのは鬱陶しいことであった。
 自宅の敷地にバイクを置いた方が、目配せできるので、安全性も高く捨てがたいのだが、前述の理由により、バイクの常用置き場として適さないと考えた。
 そこで、バイクは借りているガレージの後ろに停めることにした。実は自宅のクルマは父親のものであって、筆者のクルマは自宅から少し離れた屋根付きガレージに停めているのだった。クルマの後ろにはバイクを置けるスペースがあるので、それを利用しようというわけだ。好都合なことに筆者のガレージは一番奥にあり、クルマの後ろはブロック塀。道路からクルマの後ろに停めたバイクは見えにくい位置にある。また筆者の隣の区画はここ数年借りてが現れておらず、クルマをいちいち移動させることなくバイクの出し入れが可能だ。
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↑クルマの後ろに黒いカバーを掛けたバイクがある
 ここに置くことに決めたのはいいが、問題点があった。それは盗難対策である。何しろ自宅からは離れており、盗難が実行されれば、これを阻止するのはきわめて困難だろう。筆者は以下の盗難対策を採用した。
1.防犯アラームの取り付け
2.黒いカバーで覆う
3.頑丈な鎖で車庫の屋根の支柱につなぐ
4.前にあるクルマとの隙間を詰める


1.防犯アラームの取り付け
 実はこのアドレスV125Sには防犯アラームが標準装備されている。ハンドルをロックすると自動的に作動し、定められた時間内に連続したバイクが揺れるような衝撃を関知すると、クラクションのような大きな音が鳴るという。バッテリー保護のため10日間経過するとアラームが停止する。
 ありがたい装備だが、効果は限定的だろう。というのはこのアラームはバッテリーを外すと作動しないと思われるからだ。アラーム自身にバックアップ電池がない限りそうなるだろう。バイクのバッテリーを外すのはとても簡単で、アドレスの場合、足置きスペースの下にバッテリーがあり、六角レンチで点検蓋を開ければ、バッテリーが露出する。アラームを無効にするのは簡単で、盗難を試みる者ならば、こんなのは承知の事実だろう。まあメーカーもこんなザルみたいなアラームを搭載するとは思えないので、もしかするとバッテリーを外してもアラームが鳴るのかもしれないが、実際やってみないので不明だ。いずれにせよ「無いよりはまし」程度に思っている。

2.黒いカバーで覆う
 バイクを常に人目に晒しておくのと、カバーを掛けて見えにくくするのとを比べれば、カバーを掛けた方が、盗難の可能性が下がるのは間違いないだろう。
 バイクを晒しておくと、「ここにいいバイクがある。人目のつかない時に盗んでやろうか。」と窃盗者に強い動機を与えることになる。カバーを掛けてあれば、それを捲ろうとしない限り、どんなバイクかわからない。窃盗者にとっては、いつバイクの所有者が現れるかわからないのに、そんな行動を取るだけでも危険を伴う。それなら他にいくらでもあるカバーを掛けていないバイクを狙った方が楽だ。また盗む気持ちがなくても、悪戯をしようとする者もカバーがあれば、それをためらうだろう。
 さらにカバーを闇に溶け込む黒色にすることにより、防犯効果がさらに高まる。実際、黒色のカバーを掛けて道路側から見ても、バイクがあるらしいことすらわからなかった。
 買ったカバーは以下の商品だ。
 このカバーは下の方に穴が開いており、チェーンをカバーとバイクのタイヤに通すことにより、風による飛散防止と防犯効果を高めることができる。
 しかしこのカバーは前輪側のチェーン穴は赤いのだが、後輪は黒で、夜間において、チェーンを通す作業が難儀であった。筆者の置き方では、後輪にチェーンを掛ける方が効率がいいので、目印をつけることにした。これについては後日述べることとする。
 取り外した、カバーはクルマのトランクに収容する。筆者が借りている車庫は老朽化が進んでおり、バイクを停める後ろの屋根は穴があいていて、雨が容赦なく降り込む。雨を防ぐという意味からもカバーが必要である。

3.頑丈な鎖で車庫の屋根の支柱につなぐ
 バイクは自転車ほどではないにせよ、小型軽量であり、大人2人いればバイクを担いで、軽トラックに乗せることが可能だ。クルマと比べ遙かに簡単に盗むことができる。それを阻止するには、バイクを固定された柱などに鎖でつなぐことである。俗にこれを「地球ロック」という。もちろん金切り鋏で簡単に切れるような鎖では意味が無いし、金鋸で簡単に切断できるような支柱に固定しても、あまり意味がないだろう。
 筆者が買ったのは、直径12mmの堅牢な鎖だ。これを車庫の屋根の支柱と後輪タイヤをつなげば、あまりの面倒臭さに、泥棒も「もっと簡単に盗めるバイクにしよう」と退散するだろう。それにアドレスはその努力に見合ったバイクではないと思う。鍵はピッキングに強い6シリンダーキー採用している。
 重量は8kgもあってあまりに重いので、ツーリングに持って行くことはできないけれど、常置に使うのであれば問題ないだろう。
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↑カバーと鎖
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↑地球ロック
 3ヶ月ほど使っての感想だが、水に浸されることもある地面においているせいもあってか、鍵の回りが悪くなりはじめた。一応鍵穴にはゴムキャップがあるのだが、浅いので機能的には十分でないようだ。

4.前にあるクルマとの隙間を詰める
 バイクはクルマの後ろに置くことは既に述べたが、その際、バイクをできるだけ後ろの壁に寄せ、クルマをバイクに接触するくらいにすれば、クルマを動かせない限り、身体をいれることができないので盗難防止になる。ただし、自分自身がバイクを使うたびにクルマを前に出さないといけないので、手間が掛かるのが難点だ。実はこれは最初の1回目にやっただけで、面倒くさくなってその後はやらなくなった。しかし、長期間クルマもバイクも使わないとわかっているのであれば、こうすることで安全性は高まるだろう。


 常置場所での盗難対策はこれでいいとして、出先でどうするかは課題が残る。ハンドルロックだけでは不十分なのは明らかだが、「地球ロック」をするために重い鎖をバイクに載せるのも莫迦げている。
 効果は限定的だが、ここはU字ロックに頼ることにする。幸いアドレスにはシートの下にU字ロックの置き場がある。U字ロックは屋外の土に晒されるので汚れやすく、メットインやリアボックスの中に入れると、他の中身が汚れてしまうので、これは便利である。
 U字ロックは後輪または前輪に巻いておくだけなので、そのままバイクを運ばれてしまうと盗難効果がない。そうでなくても道具があれば、あの程度の金属棒は切断されてしまうだろう。大きいのは何度も述べているように「面倒くさそうだ」と思わせる心理的効果だろう。筆者は心理的効果を考慮して、U字ロックは目立つ黄色にした。
 またロックを目立たない黒にした場合、本人がU字ロックをしたことを忘れてしまい、そのままバイクを発車させてしまう危険がある。黄色であれば、真夜中でも目立つので、そうしたつまらないミスを防ぐ効果を期待できる。
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↑U字ロック
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↑バイクの取り付け位置
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↑後輪への固定例
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私は如何にしてクルマに乗るのをやめてバイクに乗るようになったか~アドレス納車~ [バイク]

 2016年11月4日。快晴。ついに納車の日を迎えた。暦は友引。正午は凶なので、1時を回ってからバイク屋に向かう。友引は「引」とあるので、人を引く事故を連想させるので、この日の納車を避ける人もいるが、筆者は過去のクルマでもこの友引に納車し、事故の経験はないので、それを考慮しなかった。
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↑引き渡しを待つバイク
 店内にはウインドシールドの付いたアドレスが置いている。これが自分のバイクだろう。しかし、先客の対応に時間がかかり、かなり待たされた。またその客が帰ると、商談コーナーから人影が消えた。当惑していると、やがて例の中年女性が現れ、「お伺いしておりますか?」と聞かれた。高額商品の購入客の顔を覚えていないのか、と思いつつも「アドレスの引き取りに来ました」と言った。すると白いつなぎを着た「社長」が現れて、エンジンをかけて調子を確かめた。何か不具合があったのか、一旦エンジンを切り、何やら調整をはじめた。必要書類を確認され、ヘルメットスペースに放り込まれた。そしてガラスのドアを開いて、歩道にバイクが置かれた。
 高額商品なので領収書を書いてくれるように頼んだ。彼女は預金通帳を確認して、発行してくれた。本来、領収証は何もいわずとも発行してくれるものだと思っていた。しかも発行された領収証には収入印紙が貼られていなかった。
 「ありがとうざいました」と深々とお辞儀されることもなく、きわめて事務的にバイクを受け取った。何か愛想の悪いバイク屋で心配になるが、まあ気にしないことにした。
 店を出てすぐにある歩道に停められたアドレスに跨がった。ガソリンはほとんど入っていないので、まずは給油。今やガソリンスタンドは市街地ではほとんどセルフで、筆者の近所も例外ではない。バイクをセルフで給油するのは初めてだ。ノズルの入れ方が悪かったのか、いきなり吹きこぼれた。
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↑納車直後のアドレス
 自宅に戻る。まずは儀式として納車直後の記念撮影。このバイクにはあらかじめ取り付けてもらった装備がある。
・可倒式バックミラー
・ウインドシールドスクリーン
・オプションバーエンド
 可倒式ドアミラーは今回のバイク購入の決め手となった装備で、前作「駐輪スペースの確保」で述べたとおり、我が家の駐輪スペースが狭いので、内側に折りたためるバックミラーにする必要があったのだ。買ったバックミラーは下記のものである。
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↑購入ページ
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↑商品梱包
 取り付けネジ径の違いの他、右用と左用、右ネジ、左ネジがあるので購入時に注意が必要だ。さて使ってみての感想だが、少なくともこの商品は過度な期待はできないなということだ。というのは、確かにミラーは可倒式ではあるのだが、ボルトの締結力だけでギザギザのある樹脂をかみ合わせているので、何度もミラーを動かすと、長期的にはギザギザの部分が摩耗し、固定できなくなってしまう恐れがあるからだ。できるならボルトを弛めてからミラーを動かした方がいいだろう。しかし車庫入れのたびに、いちいち六角レンチで弛めたり閉めたりするのは面倒だ。後日談になるが3ヶ月ほどでボルトが錆だしこともあるので、ここは手で確実な締め付けが得られるボルトに入れ替えるのがいいのかもしれない。
 ともあれ、ミラーを垂直に立てることで駐輪スペースに収まることを確認できた。ちなみにオリジナルのバックミラーは箱に収められて返却された。
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↑駐輪スペースには収まった
 ウインドシールドは冬の通勤には必要性を感じていたので、装備することにした。買ったのはスズキオリジナルではなく、また国内のよく知れたメーカー製ではなく、台湾製のシールドを買った。もともとこのスズキアドレスは台湾製である。また125ccバイクは台湾、中国、東南アジアでは主力の車種。こういうカスタマイズ商品はその地域製の方が充実しているのは自明である。
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↑購入ページ
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↑商品開梱後
 シールドはちょっと大きいかなと思ったが、これくらいの大きさがないと役には立つまい。実際にバイクに跨がってみると、直立すると、首から下がちょうど隠れる感じだ。風よけとしては十分だし、雨が上半身を濡らすのも防げるので、雨具を着るタイミングも遅らせることができる。ただ横風が強い場合、ハンドルを右に切ると、ヨットの帆に風を受けるがごとく、バイクが唐突に対向車線に飛び出てしまい、事故の原因になったりする。あと大きな難点としては、このシールドを装着すると、一気にオジン臭くなることだ。若い人はシールドの利点を承知しながらも装着をためらう人も多いだろう。しかし筆者は幸か不幸かこの世に生を受けてから半世紀を経過している。幸いなことに堂々と装着できる年齢となっているので問題はなかった。
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↑購入ページ
 マルチマウントバーはスマホやカメラを装着するのに必要を感じたので取り付けた。普通のバイクならハンドルはパイプになっているのでスマホホルダーの取り付けは簡単なのだが、スクーターやカブなどの実用車の場合は、ハンドルがカウリングされているのでホルダーをはめられない。したがって、ミラーの取り付けボルトを利用して、右ミラーと左ミラーの取り付け部を連結するようにパイプを取り付けて、ホルダーなどをとりつけるのだ。
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↑既にスマホ用マウントが取り付けられている
 知らない人が見ると、「この取っ手は何のためにあるのだろう」と思うかもしれない。
 ところでミラーを替えて駐輪スペースを確保したはずだが、結局このスペースには基本的にバイクを置かないことにしたのだ。詳しくは次回に記述する。

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最新情報

※※ 最新情報 ※※

■私は如何にしてクルマに乗るのをやめてバイクに乗るようになったか
事の始まり
どのバイクを買うか
駐輪スペースの確保
アドレス購入

■海外旅行
バリ島ニュージランド旅行~序章篇~

バリ島旅行記2016
ニュージーランド旅行記2016
フィリピン「シキホール島・ドゥマゲティ」旅行記
■国内旅行
最後の急行「はまなす」最後のブルトレ「北斗星」乗車記
北陸新幹線乗車記(日本鉄道完乗タイトル奪還)
銀色の寝台特急カシオペア乗車記
北海道新幹線新函館北斗開業及び札幌市電乗車記
■鉄道関連
新函館北斗駅を実地検証する
北海道新幹線新函館北斗開業を検証する
北陸新幹線の今後の展開
三江線の沿線をクルマで走ってみた

自動車関連
フィットにバックカメラ取り付け
フィットのバックカメラ追加改造
フィットにハンズフリーフォンを取り付け
フィットのバックカメラ再追加改造
フィットで車内泊
フィットで車内泊~実践編

■最近買ったもの
ソフトバンクColor Life5(401PM)の不満点
愛用手帳「ダイゴーの手帳E1014」
ポメラDM25
電子レンジで温める湯たんぽ「ゆたぽん」
野球関連
2014年マリーンズ総括と来年の展望
2015年マリーンズ総括
広島東洋カープ25年ぶりの優勝
2016年マリーンズを振り返る


■政治経済関連
自衛隊は平和防衛隊に名前を変えよう
憲法96条、両議院過半数で発議に反対
大阪都構想に関する私見
■競馬関連
オルフェーヴル
オークス馬とダービー馬の対戦成績
朝日杯FSと阪神JFを同日開催、阪神カップはを2歳上G1に
拙作競馬Website厩戸光明伝
■資格関連
簿記3級取得記
独学で合格☆ファイナンシャルプランナー2級取得記
第2種冷凍機械責任者合格記
第2級陸上及び航空特殊無線技士ダブル合格記
危険物取扱者乙種全類取得記(Z作戦計画)


■その他
高齢者運転標識に異議あり
風呂場用冬は暖房、夏は送風
追悼・大瀧詠一 



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私は如何にしてクルマに乗るのをやめてバイクに乗るようになったか~アドレス購入~ [バイク]

 購入するバイクはスズキアドレスに決めた。しかしそのアドレスでもいくつか種類があることを知った。
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型式 タイヤ メーター 価格 特徴
アドレス110 14 アナログ 20.5万円 タイヤサイズ大きく悪路に強い。発展途上国向け
アドレスV125 10 アナログ 24.3万円 装備グレードを落とした廉価版
アドレスV125S 10 一部デジタル 26.8万円 装備を充実させた主力グレード
アドレスV125SS 10 一部デジタル 27.4万円 リアスポイラー、同色ミラーなどスポーティー
アドレスV125SLimited 10 一部デジタル 29万円 グリップヒーター、シートヒーターなど快適装備


 結論からいうとアドレスV125Sにした。試乗したのはこの型であったし、時計のないアナログメータは使いにくそうだし、V125SSのようなリアスポイラーはリアボックスを取り付けたら意味のないものとなるし、V125Sリミテッドのグリップヒーターは魅力的ではあったが、グリップエンドが長い分、駐輪スペースに支障が生じることがわかったからだ。
 次にいよいよ購入である。バイクはいわゆるバイク屋で買うのが一般的だ。バイクブロスのような仲介業者を介すれば中古車も検索できる。調べてみたら住まいの近くには手頃な中古車がなかった。遠くで買うと納車も面倒だし、やはり買ったところで整備してもらったほうがいいだろう。せっかくだから手垢の付いていない新車を買うことに決めた。
 そんなわけで家から一番近いバイク屋で購入することにした。そこはホンダの看板が上がっているが、スズキのウェブサイトで最寄りの販売店で検索すると、その店が出てきた。よくみると小さなスズキの看板が上がっていた。
 その店へは家から歩いて行ける。店に着いた。店外にはPCXの中古が15万円で売られていた。駐輪スペースの問題がなければこいつにするのにと思いつつ、店のドアを開けた。
 店員はバイクの整備に忙しいのか、商談用のスペースには誰もいない。待つこと10分、ようやく中年の女性が現れた。
 「いらっしゃいませ。お伺いしておりますか。」
 いえ、お伺いしておりません。でも筆者は修理のような安い客ではなくて高額商品のお客さんですよ。とやや胸を張って、このように切り出した。
 「あの~、バイクを買いたいんですけど」
 「車種とか決めておられますか」
 「スズキアドレスです」
 「アドレスでもいろいろありますけど」
 「V125Sでお願いします」
 「うちはホンダの代理店なのでスズキ車の在庫はないので現車はお見せできないのですが」
 「いえ、もうレンタルバイクで試乗済みです」
 彼女は引き出しからアドレスV125Sのカタログを取り出し机の上に置いた。実はそのカタログはスズキのウェブサイトから取り寄せてすでに持っているのだが、遠慮なくいただくことにした。
 彼女は見積書を書き始めた。
メーカー希望小売価格   268,920
登録代行納車整備費用   9,720
自賠責保険24ヶ月   9,870
盗難保険2年   2,000
値引き   -35,510
合計   255,000


 何も言っていないのに、すでに値引きが3万5千円もある。自動車を購入するようにいくつかディーラーを巡って競合をあおれば、さらに値引きを引き出せるかもとも思ったが、家から近いという利点を考慮して、この言い値で購入することに決めた。バイクの場合、故障すれば手で押して持ってこないといけないということも計算に入れていた。
 筆者は知らなかったのだが、バイクには盗難保険というものがあるらしい。スズキ車は1年間は無料で付いているという。2年2,000円とあるが、これは実質1年2,000円である。保険内容はハンドルロックをした状態で、盗難にあった場合、5万円の自己負担で新車が提供されるらしい。バイクはクルマと違って盗難が非常に容易だ。何しろ軽いのでロックが掛かっていようが、数人で軽トラにひょいと乗せれば簡単に盗める。作業服を着ていれば、人のいるコンビニの駐車場でやっても怪しまれることはないだろう。だから盗難保険には入りたかったけど、こんなに安いとは思わなかった。裏返せはこのようなスクーターは人気がなく、滅多に盗られないということだろう。
 内心はほぼ決めていたが、「交渉には駆け引きが必要」なので即答は避け、この日はこの見積書だけ受け取って引き上げた。
 あとは最終的な決断だ。あらためてこの投資は有効か考えた。自転車で通える体力はあるのに、バイク通勤する意味があるのか。予定しているツーリングを終えたらどこに行くのか。自転車より遙かに高まる事故率をどう考えるのか。
 見積もりを受け取って2週間後、再びバイク屋に行き、購入の意思を伝えた。車体色は白にした。自分の勝手なイメージカラーはホンダが赤、ヤマハが青、スズキが黄、カワサキが緑なので黄色が欲しかったが、アドレスのラインナップには黄色はなく、青がイメージカラーとなっている。青は今乗っているクルマと同じなので、面白くないのと、夜間の視認性を考えて白にした。
 先日と同じ女性が対応し、購入が決定すると、彼女は「社長~」と大声で叫んだ。社長というからにはスーツを着た恰幅のいい紳士が現れるものと思われたが、目の前に現れたのは白のつなぎを着たオッサンであった。個人商店なのでそういうことらしい。
 その「社長」が納期を確認した。納車は3週間後の11月2日になるという。意外に時間が掛かるのはこのスズキアドレスは台湾で製造されているからだろう。
 筆者は古い人間なのでこういう高額商品の使い始めは暦に拘る。11月6日の日曜日は仏滅、5日の土曜日は先負。何か新しいことを始めるには相応しくない。11月3日の木曜日は文化の日で祝日だが、暦も先勝で悪くないのだが、どういう訳か筆者の勤務する会社はその日は稼働日であった。選んだ納車日は11月4日金曜日。暦は友引。平日だが会社には昼から休む半日有給を申請した。納車の日は眺めて近所だけを走り、土曜か日曜にちょっと遠出をしたい。
 それと折りたたみ式のミラーとウインドシールドスクリーンは筆者が手配し、現物を持ち込み、バイク屋に取り付けてもらうことにした。取り付け手数料は無料。というか請求されなかった。手付金1万円を納めた。納車までに残金を銀行振り込みで支払うことにした。クルマのように印鑑証明書もなく、三文判すら押すことなく退散した。
 あと忘れてはならないのは、自動車保険にファミリーバイク特約を付加することだ。ファミリーバイク特約には人身傷害型と自損障害型がある。自損型の場合、その名のとおり自分の責任で生じた損害も保障されるが、その分保険料が高くなる。具体的には自分のバイクの損傷は保障されない。バイクはクルマに比べて安いので、再購入すればいいということで、人身傷害型を選んだ。筆者の自動車保険は12月中旬に満期を迎える。11月にバイクが納車されると、約1ヶ月分の特約追加保険料が必要で、その金額は1,570円ということだ。1年にするとファミリーバイク特約の追加保険料は19,000円程度となる。意外とこれは高いと感じた。
 ともあれ、あとは納車を待つばかりとなった。

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私は如何にしてクルマに乗るのをやめてバイクに乗るようになったか~駐輪スペースの確保~ [バイク]

 バイクを停めるスペースが我が家にないことを知った筆者は意気消沈した。
 近所にシャッター付きのガレージがあるので、家主に電話すると、12000円/月だという。シャッター付きの場合、防犯性は高いものの、いちいちシャッターの鍵を開けたり閉めたりは面倒だ。中は広いのでクルマとバイクと一緒に置けるという利点はあるものの、それぞれ前後にしか置けないだろうから、どちらか片方を動かすときに一時的に待避させないといけない。これは値段の割に合わないとして却下した。
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↑シャッター付きガレージは面倒
 最近はトランクルームというのがあり、一時的に不要になった家財やバイクを預かってくれるらしい。場所にもよるが月3000円程度からあるという。ネット検索すると近所にあることがわかり、早速偵察に行ってきた。そこはトランクルームというよりも、築50年以上と思われ古アパートであった。つまり住めなくなったアパートをトランクルームとして再出発しているわけだ。管理人などいないのでアパートの中に侵入した。部屋を覗くと、もともと居住用なので、30cm程度の段差がある。もしバイクを置くにはスロープを用意しなければならない。狭い通路を通ってバイクを方向転換し、これまた狭いドアに身体を当てながら、スロープでバイクを押し上げる。ミラーを当てずにドアを突破できるのか不安であるし、何だか邪道なように思えた。それにあまりも古いアパートで夜に電気が使えるのかどうかもわからない。結局のところガレージもトランクルームもあきらめざるを得なかった。
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↑古アパートを活用したトランクルーム
 次に駅前の駐輪場を利用することを考えた。幸い、近所にある駅には駐輪場がある。バイクは50ccに限るという駐輪場もあるが、125ccのピンクのナンバープレートのバイクが停まっているところもある。気になる料金は3300円/月とまあ妥当である。
 しかし、本来駅前の駐輪場というのは、電車に乗る人に便宜を図るために、自転車またはバイクの一時的な置き場を提供するもので、近所の人のバイクを預かるのを想定していない。当然、電車が動いていない時間は門を閉めてしまうので利用できない。長期休暇でずっと駐輪すると、違法駐車として撤去の対象となるかもしれない。雨露を凌げる上に、駐輪のしやすさという魅力はあるものの、自由に利用できないので、この案も却下となった。
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↑駅前の駐輪場も却下
 しかし頭を抱えた筆者は名案を思いついてしまう。内側に折りたためるミラーがあれば、自宅の駐車スペースに何とか停められるのではなかろうか。
 早速ネットで調べてみた。そんなミラーはあった。本来はオフロードバイク用らしいが、そんなことはどうでもいい。取り付けネジもアドレスの径に適合するようだ。よし、早速実験してみよう。
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↑発見した可倒ミラー
 筆者は再び、スズキアドレスをレンタルし、自宅にやってきた。
 今、折りたたみミラーを取り付けるわけにいかないから、ボルトを緩めて、ミラーを内側に向けた状態で、駐輪予定スペースに突撃する。多少はミラーに当たるが、何とかスペースに収まった。バイクは結構後ろの幅が広く、脚を抜けるスペースがないが、これは後日解決可能だ。とにかくバイクが収まった。これでバイク購入への支障はなくなった。
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↑ミラーを内側に倒せば駐輪できた
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私は如何にしてクルマに乗るのをやめてバイクに乗るようになったか~どのバイクを買うか~ [バイク]

 さてどんなバイクを買えばいいのだろうか。実際は60キロは出るのに制限速度が30キロと理不尽なまでに低い50cc原付は最初から選択しないことにした。
 筆者の乗れない大型二輪と対象外の原付を除けば、バイクの排気量は大きく分けて、125cc、250cc、400ccの3種類がある。それぞれの特徴を列記する。

●125ccバイク
・必要な免許は小型2輪
軽自動車税が2400円と格安
・自賠責保険も安い(年間3460円)
自動車保有者の場合、ファミリーバイク特約で任意保険も安い
・車検は不要
・車体が小型なので渋滞のすり抜けがしやすい
・車体が小型なので取り回しが楽
・車体が原付と変わらない場合、駐輪場に駐めることができる
・車体が小さいので高速巡航性に難点がある
・高速道路に乗ることができない
・無料であっても自動車専用バイパスに乗ることできない
・一般的なナビは上の事情は考慮されずに案内されるのでムカつく
・燃費はだいたい40km/l程度
・本体価格は20万円前後

●250ccバイク
・必要な免許は普通2輪
・軽自動車税が3600円とやや高い
・自賠責保険は125ccより高い5612円
・自動車重量税が1260円必要
・任意保険はクルマとは別に掛ける必要がある。バイクは事故率が高いので掛け金も高い。
・車検は不要
・渋滞時のすり抜けは十分な道幅がある場合に限り可能
・車体が中型となり押し歩きは結構難儀
・自転車の駐輪場に駐めることはほぼできない
・かといってクルマの駐車場に停めるほどでもない
・高速巡航もそこそここなす
・高速道路に乗れる
・自動車専用道路も乗れる
・燃費は125ccより悪い(一般的に排気量に比例する)
・本体価格は30万円前後(状態人気により差が大きい)

●400ccバイク
・必要な免許は普通2輪
・軽自動車税が6000円とさらに高い
・自賠責保険は125ccよりさら高い5960円
・任意保険はクルマとは別に掛ける必要がある。バイクは事故率が高いので掛け金も高い。
・車検が必要。年間20000円程度
・自動車重量税が5000円必要
・渋滞時のすり抜けはやめておいた方がいい
・車体が大型となり押し歩きはどころか起こすのも難儀
・自転車の駐輪場に駐めることはできない
・かといってクルマの駐車場に停めるほどでもない
・高速巡航性が高い
・高速道路に乗れる
・自動車専用道路も乗れる
・燃費は250ccより悪い(一般的に排気量に比例する)
・図体がでかいので本体価格は250ccを軽く凌駕

 筆者は125ccを選んだ。何といっても維持費が安いし、通勤に使うのが前提なので、渋滞のすり抜けは必須だからだ。高速道路に乗れないという欠点は通勤には考慮に入れなくていいし、強いてあげれば無料のバイパスに乗れないというが不便なくらいだ。
 排気量は125ccに決定。次にタイプである。125ccは小型とはいえ様々なタイプがある。中には250ccと十分張れる高速性能を誇るのも存在する。ホンダGROMような超個性派のバイクもある。また高速道路に乗れない125ccの場合、高速性能よりも軽量で悪路踏破性に優れたオフロードの方が本領を発揮する。マニュアル車を求めるならば、オフロード車が選択肢となる。そのオフロードタイプ、カブのような実用車タイプ、さらにスクータータイプ。この3つが大きな区分となる。
 このうちオフロードタイプは早々と候補から外れた。目的が通勤である以上、非日常はできるだけ排除する必要がある。悪路走破性とマニュアルミッションの操作の楽しさという点は評価できるものの、荷物があまり積めず、すり抜けにも難点があるオフロードタイプを選ぶ理由はなかった。
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↑選外になったオフロード車(カワサキKLX125)
 個性派グロムも同様の理由で却下となった。GROMの場合、タイヤが滑りやすいという情報もあった。
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 そうなるとカブかスクーターとなる。カブは本田宗一郎の発明した産業遺産というべき存在で、その構造の堅牢さは折り紙付きだ。スクーターに比べ、タイヤ径が大きいので悪路走破性に優れている。また遠心クラッチによるマニュアルミッションで、アクセルで速度を調整するしかないスクーターに比べ運転の楽しさがある。通勤だけに使うならスクーターになるのだが、筆者はたまにツーリングに出掛けることも考えている。ツーリングとなればマニュアルミッションの方が面白し、タイヤ径が大きい方が走行安定性がある。少しだけ迷ったが、足下に荷物を置けるスクーターの方が積載性に分があるのと、ヘルメットを収容するスペースがあるのを評価してカブは候補から脱落した。よってスクーターに決定した。

↑候補から外れたけどカブは素晴らしいです

 次に125ccスクーターを選ぶことになる。売れているのは以下の3機種となる。
ホンダ PCX
ヤマハ シグナス
スズキ アドレス
 これらを実際に借りて乗ってみることにした。ホンダリードも候補に挙がったが、レンタル車がないので対象から外れた。

1.ホンダPCXの試乗
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↑PCX
 借りたのは大阪モノレール終点彩都西駅近くのバイク屋さん。日帰りレンタルで京都に向かった。格好は先の3機種の中で一番だ。250ccに近い車格でその分重いのだが、ホンダ得意の高出力高燃費エンジンでそれをチャラにしている。スクーターだけに悪路では弱みがあるが、舗装された道路であれば、その走行安定性は目を見張る。ホンダらしくお金はかけていないが高級に見えるメーターのデザインもいい。ホイルベースが長いので乗り心地もいい。車体が重いので、出だしの加速はやや遅いが、ほとんどのクルマに負けることはない。ただ足下に燃料タンクあるので、足の置き場が狭いのと、図体の割にメットインスペースが狭いのが難点だ。
 あとはこのレンタル車にはグリップヒーターが付いていた。春先とはいえ山の上では冷たい。そんなときこのヒーターは効果が高いとわかった。またUSBコンセントが付いているのでスマホの充電をしながら走れる。さらにアイドリングストップ機能が付いていたが、これはバッテリーとセルモーターに負担がかかるので別にいらないかなと思った。
 高評価のPCXであったが、自分の家の車庫に収まらないサイズであることが判明し落選となった。

2.ヤマハシグナスの試乗
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↑このシグナスはデザインがいい
 次にヤマハシグナスを試乗した。カタログ上の数字では家の車庫に入るはずなので、試してみることにした。借りた店は大阪市北巽にある大きなバイク屋というかカー用品ショップだった。
 ここから自宅まで走った。シグナスはPCXに比べ車体が小ぶりだ。従ってその分、走行安定性と乗り心地はPCXにやや劣る印象だ。シグナスで最も気になったのは発進加速の悪さだ。中速域からの伸びはいいのだが、この加速ではクルマに負けてしまう。
 デザインはPCXほどの格好の良さはないもののヤマハらしくセンスを感じさせる。特にアナログのタコメータとデジタル速度計が組み合わせが秀逸である。楽器メーカーなのでエンジン音もホンダに比べていいように感じる。
 その代わりメットインスペースが広く、フルフェイスを入れてもまだ余裕がある。加速には不満があるものの、家に停められないと意味がないので、最有力候補に上がった。
 自宅の駐車スペースに入れてみる。これがかなり難儀だった。カタログの車幅はハンドルの幅であり、バックミラーは考慮していない。駐輪スペースはクルマの脇を通った先にあるブロック塀と家の狭い空間だ。カーポートの柱や家の窓の格子や樋が邪魔し、バイクの進入を阻む。バックミラーはもちろん、ハンドルのグリップ先端やマフラーのカバーもこすってしまいそうだ。これ以上進めると借り物のバイクに疵をつけるかもしれないので、無理をせずあきらめた。ここにヤマハシグナスも候補から外れることになった。
3.スズキアドレスの試乗
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↑ほとんど「原付」のアドレス

 最後にスズキアドレスを試乗した。借りたのは貝塚市二色浜駅近くにあるレンタルバイク屋。というかガソリンスタンドだ。筆者が借りてから1年も経たないうちに、利用者が少なかったのかレンタルバイクは廃業してしまった。結局バイクは趣味の世界なのだ。
 スズキアドレスは先の2台に比べ車体が小ぶりだ。50ccの原付に125ccのエンジンを積んでいるようなものだ。というか外見は原付そのもので、格好良さという点ではPCXやシグナスに劣る。しかし動力性能、特に発進加速力は見るべきものがあった。これは軽い車体の割に強力なエンジンを積んでいるおかげだろう。
 アドレスの車幅は635mmと狭いのですり抜けも楽だ。信号待ちのクルマの横を注意深くすり抜けて、先頭のクルマのさらに前で待つ。信号が青となると同時に、アクセルを回せば、鋭く加速し、5秒もたたずに60キロに達し、さっきの先頭にいたクルマはバックミラーに小さくなっていた。短期間の試乗ではあったが、発進直後に抜かれることはついになかった。エンジンブレーキの効きもいい。交差点はアクセルを戻すだけで、無理なく曲がれる速度に落とせる。
 ブレーキは前輪が1ポットのディスク、後輪がドラム。前後輪ディスクブレーキのPCX、シグナスに比べ、装備的に劣る。レンタル車なので急制動はしなかったので真価は不明だが、確かにブレーキの効きがすごくいいとはいえないようだ。しかし実用面では問題なさそうに感じた。
 インパネは方向指示器のインジケータが左右兼用で、どっちが点いているのかわからないというのが不便に感じるが、必要にして十分な機能はある。むしろ凝っているPCXやシグナスと比べて見やすいくらいだ。デジタル時計も付いている。バイクには時計が必須である。いちいち腕時計を見るのは面倒なだけでなく、よそ見で事故の危険があるからだ。
 少し残念なのはメットインスペースが小さいことだ。フルフェイスのヘルメットが辛うじて入るスペースだ。これでは雨具はヘルメットの中に入れ子に入れるしかないだろう。そのかわりというわけではなかろうが、ヘルメットを引っかけるホルダーが右左両方ついている。これは二人乗りに使えるし、駐輪スペースによって左右どちらかしか使えないときに便利だ。
 こうして走っているうちにアドレスが気に入ってしまった。あとは家の駐輪スペースに収まるかどうかだ。
 帰宅後、アドレスを駐輪スペースに突撃した。我が家の塀と家の幅は740mmしかない。さらに雨樋があるところは600mmとさらに狭い。しかも自動車の横を通り、カーポートの柱も邪魔だ。マフラーはギリギリ当てずに突破したものの、どうしてもミラーが邪魔になる。ハンドルを曲げることができないのも致命的だ。バイクの場合、盗難防止のため、ハンドルを左に曲げてロックする必要がある。自宅の敷地内とはいえ、ハンドルロックができないのは防犯上問題が多すぎる。
 カタログ数値の上で、アドレスより車幅の狭いスクーターは存在せず、ここに筆者のバイク購入計画は潰えたかに思えた。
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↑あまりにも狭すぎる駐輪スペース
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私は如何にしてクルマに乗るのをやめてバイクに乗るようになったか~事の始まり~ [バイク]

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 サラリーマンにとって通勤というのは、生活の中でもかなりの時間を割いている。もちろん社内寮や歩いて通勤できるほど会社に近い人もいるだろうが、筆者の住んでいるところでは、平均して20分から30分程度の通勤時間を要しているように思える。ただしこれは同僚の住まいを勘案して勝手に推定した結果である。
 基本的に通勤時間は生産性の向上に結びつかない。簡単にいえば無駄な時間でなるべく早く移動したところだろう。
 さて筆者が勤めている会社の通勤手段で最も一般的なのはクルマである。筆者の住まいは地方都市でありバス・鉄道など公共交通機関が発達していない。いや昭和末期頃まではそれなりに本数があったのだが、乗客の減少により、廃止減便が相次ぎ、不便になって、ますます乗客が減るという悪循環に陥っている。さらに人口減少が拍車をかけている。地方都市のバス会社はどこも青息吐息である。
 そんなわけでクルマが通勤手段として選ばれているわけだが、会社側から見ると工場の敷地と同じくらいの駐車場を確保しなければならない。利益を生み出さない駐車場は損失でしかない。会社で送迎バスを用意しようにも、従業員の住まいはあちこちに点在しているし、業種によっては深夜まで仕事する人もいるし、すべての従業員に公平なサービスは提供できない。だいたい今まで家から直行でクルマで乗り付けていた人が、バス停まで歩き、帰りもバスの時間まで待たねばならない,送迎バスに乗り換えるとは思えない。
 クルマは便利な乗り物だ。道路と駐車場さえ確保されていれば、天候、時間に関係なくどこでも行ける。4、5人は乗れるので、家族連れにはうってつけだ。電車なら各人それぞれに運賃が必要だし、幼児なら他人の迷惑も考えないといけない。クルマならそれを考えなくてもいいし、多くの荷物を積むことができる。車内は冷暖房が完備で、お気に入りの音楽を聴くこともできる。スポーツカーならその高速巡航性や加速感から官能的な喜びを見いだすことができるだろう。かつてに比べ優先度は下がったとはいえ、ガールフレンドの送迎にも必要なアイテムだ。それにこの閉鎖空間が恋愛の熟成に大いに役立つし、機密が守られるという意味でいろいろヤバい話もできるのである。
 こんな便利なクルマだが欠点もある。それは価格と維持費が高いこと、事故の場合大きな責任を負わされることだ。クルマの価格は新車であれば安くても100万円から200万円くらい。消費税はもちろん、自動車取得税もかかる。年に一度の自動車税が1300ccでも約35000円。自動車重量税が2年で約30000円。これらは乗らなくても徴収される。さらに走らせるのに必要なガソリンには揮発油税が含まれている上に、さらに消費税が上乗せされている。新車購入後は3年、その後は2年に一度は車両点検が義務づけられている。先ほどの重量税を含めて10万円以上の費用が必要だ。オイル交換は最低でも年一度は必要で、タイヤは乗るほどに減るし、乗らなくても空気は減るし、バルブも劣化する。まだ溝があっても5年たてば交換しなければならない。事故で加害者となれば大変だ。歩行者を死亡させた場合、1億円以上の賠償金を請求される場合がある。クルマは安全性が向上し、運転手はかなりの確率で守られるようになったが、その分クルマは柔構造になっており、クルマはペシャンコでほぼ廃車となり精神的ダメージが大きい。
 筆者がクルマに乗っていて一番苛つくのは渋滞である。特に朝の通勤は交通集中するので、毎日遭遇する。帰りの夕方は朝ほどではないが、やっぱり渋滞はある。仕事で疲れた身体で渋滞を迎えると、信号待ちでこっくりしたことが何度もある。たまに中国道に乗れば、休日の夕刻となれば、神戸JCTから宝塚ICまでは渋滞だ。
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↑渋滞する高速道路
 事故で渋滞となれば絶望的だ。辛抱強く待つしかない。朝の通勤時に発生すれば、出勤時間に間に合わないこともある。渋滞は気にならない人もいるのだろうが、筆者は渋滞は満員電車よりも精神的ストレスを感じる。
 筆者はその対策として、クルマ通勤をやめて、電車で通勤することにした。幸い筆者は駅から歩いて10分のところに住んでおり、会社もローカル線で本数が少ないにしても、駅から5分のところにあるからだ。
 しかし3年ほどでクルマに戻した。仕事が忙しくなり、夜遅くまで勤務すると、電車の待ち時間は長くなる。1時間に1本となるので、タイミングが悪ければ1時間も待たねばならない。通勤手当は会社から全額定期券が支給されるので、経済的には楽だし、電車内で本を読めて時間を有効に使えるという利点はあるものの放棄せざるを得なかった。
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↑電車通勤
 そうしてクルマに戻ると、筆者はまた渋滞のストレスと戦わねばならなかった。何とかならないものかと思いついたのが自転車通勤であった。ペダルを漕いでいる割にスピードの出ないママチャリではなく、6万円ほどするクロスバイクを買った。クロスバイクとはレースなどで使うロードレーサーと山道を走るマウンテンバイクの中間のモデルで、そこそこスピードが出て扱いやすいもモデルだ。自転車通勤で一番問題があるとすれば、雨と寒さ対策だろう。雨具は値は張ったが登山用の黄色いレインコートを買った。黄色にしたのは夜間で目立つようにするためだ。寒さ対策はとっくにやめたスキーウエアの上着とグローブがあるのでそれを流用した。夏から自転車通勤にしたら、冬になると寒さが堪えて嫌気がさすと思ったので、敢えて2月の寒い時期から切り替えた。
 自宅から会社までの距離は7km。自動車では渋滞で30分ほどかかるが、自転車は平均して35分で到着する。わずか5分しか変わらない。如何に渋滞の影響が大きいかわかる。それに筆者の場合、クルマの車庫が家から離れているのも時間短縮要素であった。自転車なら玄関に置いておけるのでまさにドアトゥドアなのだ。
 筆者はすっかり自転車通勤が気に入った。30分ほどの連続的な運動は脂肪の燃焼にちょうどよいらしく、ダイエットにも効果があった。やがてマラソンに興味を持つようになり、週に何回かは朝は電車で通勤、帰りはジョギングといったことも併用するようになった。その体力作りの集大成がゴールドコーストマラソンで、これについては「ゴールドコーストマラソンと旅行記 その3」を参照していていただきたい。こうして自転車通勤は自分の生活にかかせないものになった。
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↑自転車通勤はいいことだらけ

 15年ほど経過してから転機が訪れた。筆者は東日本大震災の被災地である南三陸町を訪れ、津波の恐ろしさを目の当たりにした。津波が来たらまずは高台に逃げることだ。それにはクルマよりもバイクが最も速やかに移動できることを悟った。そこで、バイクの免許を取得しなければ考え、教習所に通って、何とか免許を手に入れた。このあたりの顛末は「バイク免許取得挑戦記」を参照していていただきたい。
 バイクの免許を手にしたものの、通勤で使うことはまるで考えなかった。自転車で体力を維持できているのは確かだし、経済的で、しかもクルマと遜色ない通勤時間。雨の日はつらいが、その時は電車に乗って通勤すればいい。バイクは年1回、レンタルバイクに乗るくらいだった。
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↑レンタルバイク819

 しかし転換期がやってきた。2016年、筆者はバリ島旅行に行った。これの詳細は「バリ島旅行記2016」に記載している通りだが、そこでスクーターを借りて乗ったのが運命的な出会いであった。借りたのはホンダのヴァリオというインドネシア向けに作られた125ccスクーターだった。筆者はクルマに乗る前に原付スクーターに乗っていたが、それとは全く次元の違う加速力だった。乗っていて楽しくなるというか、バイクは「速くて便利な乗り物」として、自分の意識の中で急浮上してきたのである。
 筆者はバイクを買うことを真剣に考え始めた。
 とまあ、大変長くなったが要するに、
 クルマで通勤していた

 渋滞はいやだ

 電車に変えた

 不便だ

 クルマに戻した

 やっぱり渋滞は嫌だ

 自転車に変えた

 快適だ

 バイクもいいかも☆

 ということだ。
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簿記3級取得記 [資格]

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1.はじめに
 簿記という言葉はどこかで聞いたことがあるだろう。
「金銭のやりとりを記録した小遣い帳みたいなものかな」
これは間違った認識ではないが、正しい解答ではない。実際の簿記は収入と支出を記録するだけでなくもう少し複雑である。一般家庭であれば、それこそ収入と支出を記録して残高を算出できれば十分だが、商店を経営しようとすればそうはいかない。商売では商品を売ってもすぐにお金をもらえるとは限らないし、そのまま売った客先が倒産することもある。また商売を始めるにあたっての元手だけでは足りない場合は借金をしなければならないし、それを考慮しなながら商売しなければ、いわゆる放漫経営になってしまうだろう。それに納税額が少なくてすむ青色申告を適用するには複式簿記で作成する必要がある。
 筆者はさしあたり脱サラして商売をはじめるつもりはないが、簿記の知識は頭に入れておくことは悪いことではない。また先日ファイナンシャルプランナー資格を取得したところで、できればお金に関連した資格を取得しておきたいという気持ちがあった。しかし結論からいうと、簿記とファイナンシャルプランナーは関連性が低かった。
 それはともかく筆者は簿記3級の挑戦は長期間に渡っている。1994年に1回目、2014年に2回目を受けている。1回目と2回目に20年もの期間が空いているのは、1回目の頃に、筆者の資格取得マイブームがあり、ブームが去ってからはマラソンやトライアスロンなど体力作りに専念していたからだ。それが2013年にバイク免許を取得したのをきっかけに再び資格取得マイブームがやってきたのだ。
 1回目の敗因は明らかに勉強不足であった。過去問すらやっておらず、参考書の選定も悪かった。試験でもお手上げであった。2回目はそれなりに準備したものの、理解不足が原因で過去問の成績も合格点70点ギリギリのまま、試験本番に突入し、時間不足で玉砕してしまった。
 3回目の挑戦は万全を期すことにした。
 なお、簿記の何たるかはこの動画が詳しい(リンク切れはご容赦下さい)


2.参考書を選ぶ
 簿記の勉強の最大の特徴は
「覚えることは少ないがややこしい」
ということに尽きる。とかく資格の勉強は覚えることばかりで、それこそ頭から煙が出て挫折というのが実に多い。また未経験者から見れば簿記といえば計算力のイメージが強いが、実のところ確かに間違いなく計算するという能力は必要だが、それほど複雑な計算式が必要なわけではない。その点この簿記は異質の資格試験といえる。とはいえ、この簿記3級の合格率は30%から40%で決して簡単な試験ではないのだ。覚えることも少ない、計算力もいらない。なのに簡単ではない。この試験が難しいのは問題の意図を読み取る国語力なのだ。それが簿記をややこしいところなのである。
 もう一つの特徴は一部を除いて選択式ではなく記述式なので、当て推量での解答ができないことだ。


 さて、資格取得の勉強するにあたっては良質な参考書または問題集は必要不可欠である。
i,使用した参考書
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スッキリわかる日商簿記3級
作者:滝沢みなみ
出版社:TAC出版
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 この本を1ページ目から丁寧に読めば、簿記の何たるかを理解できるはずだ。筆者の経験ではこれ以上わかりやすく書かれた参考書は知らない。少々回りくどいほど同じイラストが出てくるが、理解しやすくするにはそれしかないだろう。基礎を固めるには最適な参考書といえる。この本の欠陥があるとすれば、仕訳の説明に大半を要していて、実際に試験に出される試算表、精算表、伝票などの説明が粗いことだ。ただ簿記の能力の7割は仕訳を確実にできることであり、2割は計算力、残りの1割が知識だ。つまり仕訳ができないとお話にならないのだ。
 とにかくこの本の仕訳篇を、各単元ごとの練習問題を含めて確実に理解しておくのが肝心だ。
 注意しておきたいのは、簿記の出題範囲がしばしば変更されていて、古い参考書は使わないことだ。筆者が受験した2016年からは為替手形がなくなり、伝票も3伝票制に変わった。減っただけならいいが増えたのもあるからやっかいだ。古本屋で簿記の本を買うのはおすすめしない。日商簿記の公式Webサイトをチェックして、最新版の参考書を購入するべきである。

ii,使用したアプリ
パブロフ簿記3級日商簿記仕訳対策
wills.co.ltd
600円
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 今や資格の勉強でスマートフォンアプリを利用するのは常識だ。筆者はAndroidユーザーなのでApple対応版は存在するのか知らないが、このアプリはおすすめできる。600円とアプリにしてはやや高額ではある。しかし仕訳の勉強に関する限りこれに勝るものはないだろう。
 前述の参考書を読んで、何となく簿記というものがつかめたら、どんどん問題をやっていくべきである。問題の解答は選択式で、試験本番の記述式とは大いに違うものだが、仕訳対策としてはこれで十分である。問題数も十分ある。このアプリのいいところは以下の通りである。
・問題の解説が簡潔
・自分の解答と正答を比較できる
・間違えた問題だけを復習できる
・それとは別に問題にチェックをいれて復習できる
・出題範囲の対応や誤りが自動的に更新される
・模擬問題をダウンロードできる
 このアプリを電車の待ち時間などのスキマ時間にやっていけば、自然と仕訳の能力が上がってくる。膨大な問題数だが、これを100%正答できないと合格は覚束ないだろう。

 いきなりアプリを購入するのに抵抗があるなら、無料のLite版があるのでそれを試してみるといい。
 実のところ、資格に関するアプリは、値段が高ければ高機能とわけではなく、特にマイナーな資格はいい加減な内容のアプリが多い。しかしこのパブロフシリーズは良心的なのでお勧めできる。

ii,参考にしたブログ
パブロフくんが日商簿記2級、3級を目指すブログ
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 どんな資格の勉強でも「何でこうなるのかわからない」といった壁にぶち当たるものだし、「試験に合格するコツは何か」とかいう情報は欲しいものである。
 幸い簿記は人気のある資格なので、多くの人がわかりやすい解説を提供している。極端なことをいえば、わからない語句をグーグルで検索すれば、ほぼ疑問は解決するだろう。
 筆者が多用したのは
「パブロフくんが日商簿記2級、3級を目指すブログ」
である。名前から推察されるとおり、前述のアプリの作成者が書いているブログだ。試験情報、試験範囲、試験対策勉強法、試験前日の過ごし方、電卓の使い方など多岐にわたっている。多少回りくどい感があるが、Youtubeにビデオ講義もアップしている。もちろん無料で視聴できる。筆者は「どうすれば簿記3級に合格できるか」ということを、今まさに書こうとしているのだが、このブログはここで改めて書くまでもないほどの情報量だ。

iii,使用した電卓
 電卓は100円ショップでも売っているが、耐久性や信頼性が低い。試験中に壊れたらお手上げなので、しっかりした電気屋さんで買うべきである。シャープ、カシオ、キャノンが電卓御三家。それぞれに性能に差はほとんどないので、メーカーは好みで選べばいい。
 筆者が重視したのは以下の点である。
イ、キーを押しやすさを重視してある程度の大きさがあること
ロ、00キーがあること
ハ、メモリー機能を持つこと
ニ、平方根を計算できること
ホ、消費税計算ができること

 簿記に絶対必要なのはイロハである。小さい電卓は指が絡んで速く打てない。時間が勝負の簿記試験では絶対不利である。00キーがあればたとえば20000なら3回のキータッチですむ。これは時間短縮効果が大きい。メモリーがあれば中間計算値を紙にメモする必要がないので時間短縮できる。ニからホは簿記試験には必要がないが、例えば電気や統計関係の資格の勉強をするならば平方根は必須である。税率計算ができれば普段の生活に便利だ。電卓は10年以上使えるのでいいのを選んでおくべきだ。

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↑筆者が使った電卓(CANON製)

iv,勉強時間
 巷では簿記3級は簡単だ、独学で1週間でできるなどと書いているが、それはおそらく頭のいい人なのだろう。筆者の経験では、知識がゼロなら1ヶ月はかかると思う。また会社勤めの方なら勉強時間は限られるから、2ヶ月は見ておいた方がいい。ただしそれは仕訳の仕込み時間を含めてだから、過去問の演習は1ヶ月前からでも大丈夫だろう。


3.簿記勉強のテクニック
i,仕入れと売り上げ

 複式簿記では左に借方(かりかた)、右に貸方(かしかた)を書く。ここでの借貸には特に意味はなく、何となくそうなっているらしい。左右どちらに借方だったかというのを覚えるのに、ほとんどの簿記の本はこのように説明している。
・「かりかた」の「リ」は文字が左に伸びているから左
・「かしかたの「し」は文字が右に伸びているから右
というものである。
 借方、貸方についてはこの動画が詳しい

 しかし試験でどっちがどうだということは問われない。別にこれを覚える必要はない。むしろ覚えなければいけないのは「仕入(しいれ)」と「売上(うりあげ)」がどちらにあるかである。一般には仕入が左、売り上げが右である。
 覚え方は若干複雑である。
・「仕入(しいれ)」の「し」は右に伸びているが逆の左にある
・「売上(うりあげ)」の「り」は左に伸びているが逆の右にある
「逆の」というのがポイントである
 とにかく、簿記では「仕入」ときたら左の借方に書き、その右には現金、当座預金または買掛金、「売上」ときたら右の貸方に書き、その左には現金または売掛金を書く
「仕入」は左、「売上」は右
と反射的に書けるようになることが簿記合格への第一歩である。

ii,資産、負債、費用、収益の関係
 簿記の勉強を始めると、まず最初に資産と費用は借方、負債と収益は貸方と説明される。大雑把にいって資産は現金、負債は借金なので、ここから「資産はあったらうれしいもの」「負債はない方がいいもの」として解説される。しかし「あったらうれしい」収益が貸方にあって、「ない方がいい」費用が借方にあるのは疑問に思うはずだ。筆者が最初の2回で受験で玉砕したのは、ここが理解できなかったからだ。
 筆者はこのように考えた。

イ、商売を始める
 商売を始める場合、まずは元手の資本金と借金をするはずだ。この場合の仕訳はこうなる。
借方貸方
現金 1000借入金 500
資本金 500


元手の現金は資本金として500円、借金は500円の合わせて1000円だ。複式簿記は何かが増えたら、その理由または結果を反対側に書くというのが基本だ。この最初の仕訳を見てまずはそれをイメージしてもらいたい。ここでは資産である現金が増え、その代わり負債の500円と資本金500円が増えたというわけだ。

ロ、まずは備品を購入
 最小限の行商をはじめるにしても備品やら筆記用具などの消耗品が必要だからそれを買う。
借方貸方
備品 500
消耗品 50
現金 550

 ここでは備品と消耗品を合わせて現金550円で買った。現金550円が減少したから貸方に550円を書く。減った理由が備品と消耗品だったというわけだ。現在現金は450円である。この場合は備品と消耗品が増えたけど、資産である現金が減ったというわけだ。簿記の世界では消耗品と消耗品費では扱い方が違うのだが、ここでは資産としている。また備品も経年劣化するので減価償却という概念がある。この消耗品と減価償却が毎年のように試験に登場するのでよく理解しておくこと。

ハ、商品を仕入れる
借方貸方
仕入 300現金 300


 売るための商品を仕入れた。商品とは「米屋が米を買う」場合の米に相当する。現金が減ったので、貸方に300円と書く。前述したように仕入(シイレ)は左です。

ニ、宣伝する
借方貸方
宣伝費 50現金 50


 商品を売るために広告を打った。ここで初めて費用が登場する。宣伝費を50円払ったというわけだ。貸方に50円と書くのはもうパターンでわかるだろう。

ホ、商品が売れた
借方貸方
現金 500売上 500


 300円で仕入れた商品が500円で売れた。現金500円が増えたので借方に記入。その理由が貸方に売上となる。前述したように売上(ウリアゲ)が右。

ヘ、借金を返済
借方貸方
借入金 500現金 500


 借金を返済を催促された。親類に借金したので金利はタダにしてくれたことにする。貸方にあった借入金が減るので、反対の借方に書き、そのかわり資産の現金が減った。

ト、さあ決算
借方貸方
現金 1000

備品  500
消耗品 50
仕入300
宣伝費 50
現金  500
借入金 500
借入金 500
資本金 500
現金 550

現金 300
現金 50
売上 500
現金 500



 話を簡単にするため、ここで決算を迎えたとする。ここまでの仕訳をまとめると上のようになる。まずは現金に注目すると借方と貸方のそれは次のようになる。
借方=1500 貸方=1350
借方の方が150円多い。つまり現金が150円残っているわけだ。借方と貸方を同額にするにはどうすればいいか。それは貸方に150円足せばいい。
借方貸方
現金 1500現金 1350
収益 150



要するに、この150円が仕訳での収益となるのである。これが右側の貸方に収益がくる正体になるのである。

 費用はどうかいうと、仕入れた商品が売れずに、決算を迎えたと考えればいい。
借方貸方
現金 1000

備品  500
消耗品 50
仕入300
宣伝費 50
借入金 500
借入金 500
資本金 500
現金 550

現金 300
現金 50
現金 500


 同様に現金に注目してみると、
借方=1000 貸方=1400
 今度は貸方の方が400円多くなる。同額にするには借方に400円を加える。
借方貸方
現金 1000
費用 400
現金 1400



 費用が400円。つまり400円の赤字となるわけだ。これが費用の正体である。赤字なのに借金を返済したのは、ちょっと無茶なのだが、まあせかされて温情で返済したと考えるとする。この赤字は資本金の500円を取り崩していることになる。

 どうだろうか。これで費用、収益がなぜ借方、貸方にあるのかおわかりいただけたのではないか。筆者はこのように実際に商売したことを考えて、ようやく理解できた。特に最初の資本金から現金を元入れするところは簿記の概念上重要なので覚えておくことだ。

iii,仕訳をすばやくするには

簿記の試験では第3問が最も時間を要する。ここは多くの仕訳を誤ることなく、計算用紙に書いていく必要がある。売上とか仕入、売掛金に買掛金とかよく似た字面もあるし、減価償却累積金とか書くのも嫌になるのもある。また50,000とか0を書くだけでも面倒で時間がかかる。
 そこで筆者は以下のような略号を考えた。

売上げ=売
仕入れ=仕
売掛金=U
買掛金=K
支払手形=シT
受取手形=ウT
減価償却費=dep(depreciation costの略)
減価償却累積金=るい
50,000=50,---

 まず、仕訳に頻出し、かつ重要なのは、売上、仕入、売掛金、買掛金である。売上を売、仕入を仕の一字に省略する。売掛金と買掛金は、これらと間違えないようにまた目立つようにU、Kのアルファベットで書く。手形は同じくTで表して、支払手形をシT、受取手形をウTとした。売上、仕入をウ、シにしなかったのはこの手形と間違えないようにするためにである。
 長い減価償却費はdep、減価償却累積金は「るい」とした。
 そして、これが一番重要だ。簿記では千円以上の単位を扱うことが多い。それを丁寧に,000と書いていては時間がかかる。千円以下の単位ですべてゼロなら、「,---」とコンマと横棒に省略するのである。

4.合格点を取るために
 簿記3級の試験は大問5つで構成されている。

1,仕訳問題(5題) 配点20
2.帳簿記入(商品有高帳、補助簿の選択など) 配点8~10
3,試算表 配点30~32
4,伝票会計など 配点8~10
5,精算表または財務諸表作成  配点30~32

 簿記を勉強したことがない人は、何のことだかわからないかと思う。それはさておいて、まずはこの簿記3級の合格点は70点だということだ。この配点を見ると、1,3,5の奇数問題が全問正解ならそれだけで合格だ。つまり偶数問題の帳簿や伝票会計は面倒な割には配点が低いので、勉強は後回しでよいわけだ。極端なことをいえば試験前日にやってもいいのである。
 そのかわり奇数問題は確実にモノにする必要がある。まずは第1問の仕訳問題は5題しかなく難易度も低いのに配点が大きい。ここは絶対満点を取らないといけない。筆者が仕訳が重要だといった理由はそこにある。実際の試験では、この第1問は7分程度で解答する必要がある。そうしないと第3問、5問をやっている時間がなくなるのである。
 次に試算表はある一定の期間の取引を重複に注意しながら仕訳し、それを勘定科目ごとに合計していって、その金額を借方と貸方にある前月の繰り越しと合わせる。つまり、ここでも仕訳がでるので、それが重要になってくるわけだ。
 試算表で超重要なのは合計試算表と合計残高試算表を間違えないことだ。
 試算表の左端と右端に「○月○日合計」と書いているのは、合計試算表で、この場合借方、または貸方の繰り越しと合わせるだけでいい。
 試算表の借方左端と貸方右端に「残高」と書いているのは、資産または費用であれば、借方の合計から貸方の合計を引き、負債または収益ならば、貸方の合計から借方を引いた金額を記入する必要がある。
 やってしまいがちなのは合計試算表なのに残高試算表の計算をしてしまうことだ。この場合、仕訳も計算も合っているのに、0点となってしまう。
http://pboki.com/boki3/trial/tb.html
↑上記の問題のパブロフによる解説

 それから、借方と貸方の合計が合わなくても気にしないことだ。試験には部分配点があるし、過去の傾向から合計が合っているかどうかは配点されないからだ。
 第3問は簿記の試験でもっとも時間がかかるので、確実な仕訳と慎重な計算が要求される。
第5問の精算表は商店の決算書というべきものだ。年度末時点の試算表から、繰り越し、見越し、前払い、未払いなどの修正仕訳をして、損益計算書と貸借対照表を作成する。試算表ほどではないが仕訳の知識がないと解けないのはいうまでもない。それと保険金などの前払い金や未払い利息を月割りで処理したり、消耗品費を消耗品に振り替えたり、繰越商品の精算に関する知識が必要だ。精算表作成は借方、貸方をチェックできるので割とわかりやすいのだが、精算表なしでいきなり損益計算書と貸借対照表を作成する問題が出されることがある。この場合は計算用紙に精算表を書いていくことになるが、その分間違えやすくなるので注意が必要だ。
 第3問と第5問でそれぞれ30分から40分の時間を要する。試験時間は120分だから第1問3問5問だけで90分を要するので、第2問4問は30分程度しか時間がないことになる。
 しかし第2問4問はそれほど難しくない。伝票問題は仕訳がわかっていれば、簡単に解けるし、帳簿に関しては繰り越しとか先入れ法とか移動平均法とかがややこしいけど、それほどの時間を要しない。おそらく両方で20分程度でできるはずだ。重要なのはヤマ張りをしないことで、過去問で既出しているパターンを浅く広く理解しておくだ。奇数問題さえ完璧なら0点でもいいし、部分配点で得点できれば幸運だったと思えばいいのである。こういう資格試験は合格点に達すればいいのであって、満点を取る必要はないのである。
 そして最後の10分は見直しをすること。筆者も経験したが、じっくり見直すとケアレスミスはあるものなのである。これだけでも10点は上積みできる。見直しの10分を作れるくらいの実力をつけて挑みたいものだ。

5.過去問の取り組み
 参考書を読んで簿記をまあある程度理解できた。仕訳もアプリでほぼ完璧にできた。この段階になったら、過去問の演習に取りかかる。簿記3級は過去問の傾向から大きく逸脱した問題は出題されないから、過去問演習は重要である。
 過去問はTACや大原専門学校のサイトから簡単に入手できる。簿記試験は問題にあらかじめ書かれている数字の横に書き込まないと計算しにくいので、紙代は膨大になるが、PDFファイルを印刷した方がいいだろう。
 過去問はその実施回ごとに2時間の制限でやってもいいのだが、たぶん最初にそれをやると、時間が足りなくて挫折する可能性が高い。
 筆者のお勧めは第1問の仕訳を入手できる過去問をすべてまずやってしまうことだ。パブロフのアプリをやった後なら、ほぼ満点のはずだ。間違えたところをチェックする力試しが目的だ。ただし為替手形は2016年以降は出題範囲から除外されたのでやらなくてもいい。
 その後はボリュームのある第3問を同様に、過去4回分を連続的にやる。最初は30分ではとてもできず、落胆するが、回数をこなすうちにできるようなるから心配しなくていい。
 最初のうちは第3問だけで精一杯だと思うが、第5問も同様に過去4回分をやる。サラリーマンの場合、平日は2時間勉強できればいいところなので、一日に第3問と第5問を1回ずつやるつもりで進めればいい。間違えたところは自分の弱点なので、そのポイントノートに記載していく。このノートは試験前日、および試験会場での直前チェックに役に立つ。
 ともあれ1週間あれば奇数問題攻略の取っかかりができるはずだ。これを同じ問題であと1週間、もしくは2週間、つまり3回転すれば相当実力がつくはずだ。
 次に実践問題に入る。過去問はつまりは過去に出た問題で、次にはそれに似た問題は出るが同じ問題は出ないのだ。そこで予想問題をやってみるのが重要だ。一番確実なのは大原やTACなど専門学校の模擬試験。さすがにそこは有料だけあって精度が高い。しかし独学者には無縁だ。参考書や問題集に申し訳程度に模擬試験がついているが、これはもう一つ精度が低いようだ。考えてみれば出題者もその模擬試験と同じ問題の出題は避けるだろう。むしろそれは出ない問題と考えるべきだ。
 筆者のおすすめはパブロフ簿記アプリ購入者が無料でダウンロードできる「過去問を分析した作った120分の実践問題」だ。これは6回分ある。実はそこに書かれたURLにアクセスすれば購入者でなくても入手できる。それぞれに詳しい解説もついてる。過去問をやる時間のない人は、この実践問題だけでも合格点に達すると思われる。
 筆者は6回分を3回転することにした。この時点では第2問4問に必要な伝票や帳簿の知識はなかったのだが、実際に持っている知識だけで解いてみて、間違えたところを覚えることにしたのだ。参考書を読んでも眠たくなるだけだ。
 3回転だから3週間かかることになる。最初にやってみた結果は50点とかがっかりしたが、やっているうちに60点、70点、たまに80点とれる時もある。しかしなかなか80点以上にはならない。とにかく前の自分よりよくなったらそれは成長していると確信しながら勉強を進めることだ。

6.最後の1週間の過ごし方
 さて過去問も、模擬試験もやった。ここまでで何回やっても正解だったところは頭に入っているからもうやらなくていい。問題は何度やっても間違えたところ、つまり苦手を克服することである。
 過去問、模擬試験を採点して、苦手問題をピックアップする。それを重点的にやっていくわけだ。ここまで来ると、2時間あれば、第3問のボリュームでも3問ぐらいはできるようになっている。土曜日は最終チェックに回したいから、月曜日から金曜日までの5日で2回繰り返すとして6問の苦手問題をセレクトする。これを平日できれば3問、最低でも2問やるようにする。そうすれば、苦手は自信に変わっていくだろう。
 最終の土曜日は終日時間が使えるので、パブロフの実践問題6回分を全部やるつもりでいきたい。実際何回もやっているので1回2時間はかからず、1時間半ぐらいでできるはずだ。これを夕食までに完了すること。
 夕食後はチェックノートを見直して苦手の確認。それから重要度の低い伝票や帳簿の再確認をする。とにかく不安で仕方がないが、睡眠不足は集中力を低下させるので、ほどほどに切り上げて、できるだけ早く寝るのが重要である。

7.試験本番を迎える
 2016年10月3日にインターネットで受験を申し込んだ。簿記の勉強は申し込んだ頃から始めた。仕訳で1ヶ月。11月からは過去問。なぜかペースが上がらず、模擬試験の全通しを始めたのは試験本番3日前だった。時間が足りないので、金曜日の午後から半日有給休暇をもらって勉強時間に充てた。
 土曜日は家事と甘いものを食べたくなったのでコンビニへチョコレートを買いに行った以外は、ほぼ勉強に専念した。6回分の模擬試験はすべて合格点だった。しかし帳簿決算に不安が残った。最後に模擬試験のうち間違った問題を集めて再挑戦。これは60点だったが、前に説明した合計試算表なのに借方貸方の引き算をやってしまったのが原因だ。
 最後に商品有高帳の勉強して早い目に寝た。
 そして11月20日、試験本番を迎えた。
 朝食後、会場の出発まで時間があるので決算締め切りの勉強などした。
 バイクで向かった試験会場。会場は和歌山県立商業高校。商業学校なので女子が多い。教室も何かこぎれいな気がした。
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↑試験会場の”県和商”
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↑試験のあった教室
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↑試験問題の表紙

 試験開始は9時からとなっていたが、説明開始がその時刻ということで、実際に開始したのは9時12分だった。まずはざっと問題を眺めてみる。

第1問 仕訳5題
第2問 備品の減価償却
第3問 合計試算表
第4問 伝票会計の仕訳日計表
第5問 貸借対照表・損益計算書

 ざっとみて、素直な問題が多い。この試験で合格しないとやばいなと思った。1,3,5,2,4の順で片付けた。合計試算表は残高試算表ではないことをないことを確認した。貸方と借方の合計が合わないが気にしない。備品の減価償却は正直よくわからなかった。時間は2時間目一杯つかった。最後の見直しで貸借対照表の計算間違いを見つけた。
 合計試算表の合計が合わなかったので、どこかで計算が間違っている訳だし、減価償却も確信が持てなかったので、自信満々とはいかないが、どうにか合格点に達しているように思えた。

8.合格発表
 翌日には資格の大原などで模範解答が発表されたが、簿記は問題用紙を持ち帰られるが、解答を書き込む時間がないので、答え合わせができない。したがって、合格発表のある11月28日まで模範解答を見ずに待つことにした。
 そして合格発表の日がやってきた。受験した都道府県の商工会議所のウエブサイトに合格した受験番号が発表させる。その日は仕事で、発表は午後。仕事が終わって、スマホでさっと見てもいいのだが、帰宅してからパソコンでじっくり見た。
 受験番号があった。合格だ。祝杯でジントニックを飲んだ。
 合格証は商工会議所に取りに行くか簡易書留で郵送してもらうかである。12月17日、合格証が届いた。
 この試験の合格率は52%ということだ。簡単な問題でよかった。資格試験というのは簡単な試験の後は難しくなって合格率が下がり、そうなるとこれではまずいと考えるのか、試験が簡単になって、合格率が上がるのである。実際前々回の試験の合格率は30%台であった。努力もそれなりにしたつもりだが、やはり幸運に恵まれたといえる。
 さて筆者はこうして簿記3級の合格証を手に入れた。簿記3級は個人商店の経営に必要な能力を問うもので、会社の経理部を目指す人には不十分だ。モノをいうのは簿記2級だ。簿記2級は商業簿記の他に工業簿記も対象になる。モノを仕入れて利益をつけて得るだけの商業と異なり、工業は材料を購入して、加工して、必要に応じて在庫して、売らないといけない。商業より難しいのは明らかだ。簿記3級の感触からすると、2級は倍ほど勉強すれば、合格できるかもしれない。でも今のところそのような気力が沸かない。どうせならもっと他の資格を取りたいと、移り気な筆者は思うのである。
 ところでこの記事を読んで、簿記3級に興味を持った人にはちょっと他の資格と比べて有利なことをお教えしよう。それはこの資格が低予算で取得できることである。筆者がこの簿記3級に要した費用は以下の通りである。

簿記3級受検料 3218円
参考書 1026円
簿記アプリ 600円
切手代 476円
 合計 5320円

 まず受検料が安い。記述式で採点も面倒なのに、どうやってこの低価格を実現しているのだろうと思う。一般的な資格試験はだいたい6000円ぐらいだ。
 参考書も前述の1冊で十分だ。次にアプリとパソコンでわからないところを検索し、あとはひたすら過去問と模擬試験を繰り返すだけなのだ。今時5000円台で、ある程度の努力で、そこそこ知名度のある資格を取れるのはなかなかない。
 最近、日商簿記の受検者は減少しているというが、決してその魅力は衰えていない。「何か資格を取りたいけど、何が手頃かなあ」と考えている老若男女に簿記は自信を持って勧められる資格だ。

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↑お約束の合格証
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三江線の沿線をクルマで走ってみた [鉄道]

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 JR西日本三江線。その名を聞いても、どこにあるのか知っているのは鉄道ファンか地元の人だろう。三江線は広島県三次市と島根県江津市を結ぶ全線108kmの陰陽連絡線である。中国随一の大河、江の川に沿って建設された。ただし戦前に南北両端が開業してからしばらく放置され、中間部分が完成して全通したのは1975年とあまりにも遅かった。そのころには完全にクルマ社会になっていて、せっかく全通した三江線は見向きもされない状況であった。それがわかっていながら建設されたのは、島根県出身の大政治家の働きかけがあったのでは、と個人的に思っている。
 路線は江の川に沿って建設されたので、三次と江津間の最短距離を結んでおらず、広島-松江はおろか、広島-浜田はもちろん、三次ー江津の都市間輸送さえ利用する価値のない線であった。開業以来、ごく僅かの臨時列車を除き、定期の優等列車の運転がなく、普通列車の直通運転すら当初は運転されなかった。運転本数は現在一日5本で、車両も小型のディーゼルカーの単行運転である。
 こんな低需要の線が廃止を免れていたのは、沿線の道路が未整備であると判断されたからだ。しかしながら最近はそれも解消されつつある。近年、地球温暖化の影響で集中豪雨が日本列島各地を襲うようになった。この三江線もたびたびその被害に遭い、長期間の不通が余儀なくされていた。その際はバス代行運転を行うわけだが、多少の時間を要するとはいえ、バスで交通機能しているということは、実のところ道路整備がされているという事実を証明していることに他ならない。過去復旧に1年以上かかったこともあったが、特に不便であるとの声はなかった。あっても沿線に人口が少なすぎて声にならなかったのだろう。
 三江線にさらに致命的な弱点があるとすれば、沿線に温泉とか世界遺産とか風光明媚な場所とか、偉人の足跡とか観光名所になりうる施設などが全くないことである。
 JR西日本の見解は概ねこんな感じだ。
「三江線は都市間連絡としては機能せず、観光需要もなく、地域輸送にしても、過疎化で人口が減り、先に期待のもてない状況だ。鉄道は大量高速輸送でこそその真価を発揮できる。現在の三江線は鉄道の施設を維持するだけの需要はない。道路整備も確実に進んでいるので、この際三江線は廃止し、沿線自治体がバスなどの公共交通を考えていただきたい」
 しかし地元は納得しなかった。三江線の利用客が少ないのは、列車本数が少なすぎるからだ、行政としても回数券に補助金を出したり、住民に啓蒙運動して利用を促進し、(無理矢理作った)観光スポットを旅行客にアピールするから運転本数を増やしてほしいとJRに懇願した。そこまでいうならと、JR西日本は実験的に代行バスの本数を増やし需要を喚起してみた。鉄道は本数を増やしたくても、設備がそのように対応できないのだ。実験は無惨なもので、本数を増やしても乗客は増えなかった。沿線の人はクルマをすでに持っているので、わざわざ時間のかかるバスに乗らない。ローカル線の客はクルマを持たない高校生が主力である。それも少子化で子供の数が減っており、バイク通学や学校がバスを用意すれば、鉄道の必要性もなくなってしまっていた。
 JR西日本は「これでわかっただろう」と廃止やむなしをやんわりと口にした。しかし地元は三江線活性化協議会を立ち上げ、2011年から総額7600万円の予算を投じて、何とか乗客を増やそうと取り組んだ。しかし利用者の減少に歯止めがかからない。沿線自治体は「まだまだ活性化の取り組みを行う余地があるのではないか」といった趣旨の意見が出されているようだ。
 地元の本音ははっきりしている。どうやったって三江線の乗客は増加しない。だからできるだけ長い期間JR西日本に運行をお任せしたいのである。最大の目的は輸送需要があることではなく、鉄道を失うことによるステータスの維持なのだ。だから年間数十億の赤字がでるのが確実な三江線の経営を引き受けるつもりはないのだろう。地元自治体が共同でバスを運行すれば、その百分の一の赤字ですむ。結論はそこに落ち着くしかないのだが、時間を稼いでいるのだろう。
 そしてついに、2016年9月30日、JR西日本が廃止日を2018年4月1日とする廃止届を国土交通省中国運輸局に提出した。これで三江線の廃止は免れないものとなった。日本鉄道全線完乗者としては寂しい限りだが、これも時代の流れである。三江線には別れを告げに行こうと思った。
 実は筆者が三江線に乗ったのは1985年8月。当時はまだ国鉄の運営で、国鉄時代に乗ってそれ以降乗っていない数少ない線の一つだ。当時の三江線の記述は以下のようになっていた。

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江津6:50(三江線325D)9:53三次
 6時に起きた。駅前の旅館を出発。江津では列車を乗り間違えるところであった。
 三江線は2両編成のキハ47。乗車率は各ボックスに一人ずつというところ。
 しかし空は曇。だんだん混んできた。石見川本でまた車内は閑散となった。9時頃また客が増えた。沿線を流れる江川もさして興味がなくなった。
 終着の三次は乗り換え駅で大きい。文庫本と鮎寿司を買って、駅の写真を写そうと思ったが面倒になってやめた。
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 あまりに簡潔な記録である。だが今見直すと、なかなか味のある記録である。まず、当時は2両編成だったということ。乗車率はボックスに1人程度だから、単行では厳しいとの判断で、当時はそれなりに客が多かったのだろう。だんだんと混んできて石見川本で空いたということは、江津からこの方面への通勤通学需要があるのだろう。石見川本の少し先の浜原までは戦前に開通している。古くからの集落が存在するのだろう。ただし災害で不通になるのはこのあたりが多い。9時頃客が増えたとあるが、これは沿線の要所である口羽に到着したことを示す。ここからは戦後しばらくして開通した古い区間である。それまでの記述が全くないのは新しい線でトンネルが多く、おそらく眠っていたのだろう。ここからは三次方面への旅客流動がある。この線は江の川に沿って走る。従って江の川を見飽きて興味がなくなるのは当然だ。三次は広島内陸部の主要都市で芸備線と連絡する大きな駅だ。

 そんなもう一度三江線に乗ってもいいのだが、今回はクルマで三江線沿道を走ることにした。道路の整備状況を確認するのが第一の目的。第二の目的は三江線で最も有名なポイント、といっても鉄道ファン限定だが、宇都井駅をじっくり眺めるためである。宇都井駅はトンネルとトンネルの間にある高架駅で、地上5階分の高さにある「天空の駅」と呼ばれている。もし鉄道で行ったら、この駅で降りてしまうと2時間は手持ちぶさたになってしまう。だからクルマで行こうというわけである。
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↑三次駅
 2016年2月27日午前10時43分、筆者は三次駅にいた。ここからクルマを走らせて、江津駅を目指す。方針としてはできるだけ三江線に沿った道を走ることにしていたが、やむを得ないときはこの限りではないとした。江の川を渡る箇所が道路と鉄道が離れていることが多く、浜原ダムを回避するため、三江線は道路から大きく離れるところがあるからだ。
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 10時50分、出発進行。しばらくして堤防を降りれば三江線の沿道を走れるのに、うっかりそのまま直進。結果として三江線の対岸の国道375号線を走ることになった。ようやく橋を見つけた。狭く古い橋で対向車がくればやっかいなことになるが杞憂だった。三江線の踏切を渡ると、右側に所木駅がみえた。ここからはしばらく線路を見ながら走った。
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↑所木駅
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 式敷駅を過ぎると、三江線は江の川を斜めに横断し対岸に移る。筆者のクルマはそのまま進んだが、当面橋がないことに気づき、途中で引き返し、式敷駅手前にあった橋を渡った。
 また三江線に寄り添うことになった。しかし線路は香淀駅を過ぎるとまたも江の川を渡り、対岸に移った。また橋まで戻って対岸に移るかと思ったが、クルマはそのまま直進し、国道375号線を進んだ。
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↑斜めに江の川を渡る三江線
 しばらくすると橋があったので左折し、三江線との合流を目指した。目の前に作木口駅があった。
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↑バス停のような江平駅
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 しばらく走って左折し、この地にふさわしくないほどの立派な高架橋で線路を越える。高架橋の下には口羽駅がある。このあたりは三江線沿線随一の集落となっている。
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 カーナビにだまされてしばらく県道7号線を直進していたが、やがて間違いに気づいてUターン。
 三江線は口羽を出るとすぐに川を渡る。しかし伊賀和志という人名のような駅を過ぎると、また川を渡る。この口羽からは昭和50年代に開通した新しい路線で、トンネル、高架橋が多用されて最短距離を結んでいるからだ。
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↑口羽-伊賀和志間の鉄橋は新しい
 したがって筆者は橋を渡らず、そのまま江の川の左岸を進んだ。この道はグーグルマップによると県道294号線というらしいが、ただの田舎道である。
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 T字路を左折すると、山と山の間にT字型の高架橋が見えた。「天空の駅」宇都井駅である。時間は正午を迎えていた。駅周辺はそれなりに民家があるが、人影がない。雨が降ってきた。駅の直下の空き地にクルマを止め、雨宿りするように駅舎に入る。駅舎といってもただの階段である。エレベーターはない。5階建てのビルに相当する高さまで階段を駆け上がらねばならない。
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↑宇都井駅遠景
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↑宇都井駅
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↑宇都井駅反対側
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↑駅入り口
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↑階段
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↑あと26段
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↑最上階待合室
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↑時刻表
 やがて最上階に着いた。アルミサッシを開けるとそこはホームだった。右を見ても左を見ても線路の先はトンネルが口を開けている。鉄道ファンには有名な駅なので訪問者は多く、書き込みノートも置かれている。
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↑駅名標
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↑駅の両端はトンネル
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↑駅から下を望む
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↑書き込みノート
 次の列車到着までは1時間以上あるので、ここを立ち去ることにする。
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 県道294号線を進み、JA島根おおち大和支所を右に曲がって、江の川を渡り、再び国道375号線を進む。険しい川岸を三江線と国道が平行して走る。右手には潮温泉大和荘がある。しかし観光地としては魅力に欠けるのか人影が見あたらない。
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 それにしても人気がない。民家はあるのだが、人の姿が見えないのである。いたとしてもいったい何の仕事をしているのか。農業か林業か。商業施設もないに等しい。まるで昭和から時が止まっているようだ。
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 潮発電所を過ぎると三江線は右手に進み、川を離れて山を目指す。浜原ダム湖を避けるためである。しかし道路はそのまま直進し、ある程度川沿いを進んでから、トンネルに入った。しばらくしてクルマは国道を離れ、三江線沿いの道を進んだ。粕淵駅に立ち寄ってから、線路に寄り添って進む。明塚、石見簗瀬、乙原、竹、木路原、石見川本、因原、鹿賀、石見川越、田津、川戸といった駅を通り過ぎる。
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↑粕淵駅
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 13時23分鹿賀駅を過ぎたところに線路越しに小さな滝が見えた。それを写真に撮り、しばらく進むと汽笛が聞こえてきた。しばらく進むと、単行の気動車が現れた。江津を12時34分に出発した浜原行きである。全く意図していたわけではないが、絶妙のタイミングで列車の走行動画を撮ることができた。残念なのはクルマのフロントガラス越しなので、不鮮明であることだ。
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↑小さな滝が見える

↑ちょうど列車がやってきた
 石見川本は高等学校が、川戸には江津市役所支所があるほどの集落だが、その他の駅は1日10人以下しか利用客がいない。JRのローカル線は高校通学生の利用客が多いものだが、この三江線は開通当初から本数が少なく、スクールバスが幅を利かせているので、利用客が少ない。
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 この先の線路沿いの道は行き止まりとなるので、江の川を渡り、川平駅の手前の橋を渡り、再度線路と合流した。ここから先は道路が線路に全体の半分ぐらいしか並行していなかった。終点の江津のひとつ手前の江津本町駅を右手に通り過ぎる。駅前には何もないが、しばらく走ると民家が密集している。
 14時2分、国道9号線バイパスを潜り、14時7分終点の江津駅に到着した。小ぎれいになった三次駅と異なり、国鉄時代から変わらぬ江津駅のたたずまいだ。これで約3時間20分の三江線を巡る旅は終わった。
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↑江津駅
 三江線沿線を実際に走ってみての感想だが、道路は十分整備されているし、将来の人口を考えても、交通弱者の対策としては、タクシー会社の委託によるマイクロバスの運行、中高校生に対してはスクールバスで対応可能と思われる。沿線には起爆剤になりそうな観光地もない。したがって廃止は妥当であると確信した。
 ただ口羽-浜原間の線路は新しく、鉄筋コンクリート造りの高架橋もあって壊すにも費用がかかる。それに宇都井駅という鉄道ファンにとっては垂涎の駅もある。そこでこの区間は保存鉄道として残し、台湾の烏来台車のような小型エンジンによるトロッコ列車や、ペダル走行による車両など、遊戯観光施設として利用するのはどうだろう。壊すよりもその方が価値があると思う。

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2016年マリーンズを振り返る [野球]

 前年2015年は3位に入り、クライマックスシリーズのファーストステージを突破したマリーンズ。投手陣は涌井、石川の両先発。内、西野、益田の救援陣。打撃陣は今江がFAで楽天に移籍し、層が薄くなったとはいえ、キューバの大砲デスパイネが残留し、前年3割を打った清田、俊足の荻野、首位打者経験のある角中、高卒新人の平沢の加入で刺激を受けた鈴木、正捕手の座をほぼ確保した田村。それに福浦、井口のベテランが固める。さらに巨人にさらわれたクルーズの代役として、韓国プロ野球にいたナバーロを獲得し、打線強化を目指した。
 しかしナバーロが銃刀法違反で謹慎処分を受け、それでやる気をなくしたがどうかわからないが、復帰後も守備で怠慢プレーが目立ち、しかもそれを補う打棒を安定的に発揮しなかった。
 投手陣では、いつもは秋口にしか投げられなかった内が開幕から救援陣の一角を占めて、終盤の反撃を撃退した。先発では涌井は圧倒的な投球はなかったものの、石川が防御率1点台で前半を折り返すなどエース的存在にのし上がった。これにこの年から加入したスタンリッジが試合を作る投球で、彼らが3本柱となった。しかしそれ以外の投手は投げさせてみないとわからず、新人関谷やオープン戦で存在感を示した二木に大きな期待をかけるというのは無理というものであった。しかしここ数年ずっと失点が得点を上回り、防御率も4点台だったことを考えると、チーム防御率3.66は大幅に改善されたといえる。これは伊東監督と落合投手コーチの功績といっていいだろう。
 打撃陣では角中がほぼシーズン通して打率首位の活躍ぶりで、鈴木が3割、2軍では好成績も一軍では実績のなかった細谷も3割をマークするなど春先は打線が好調だった。しかし細谷がすぐに化けの皮が剥がれ、鈴木も夏場になると打率が降下した。デスパイネは期待通りの長打力を示し、チームの危機をたびたび救った。ただ、大砲は彼だけなので、相手チームにとって威圧感がなく、打線がつながらないとすぐに得点欠乏症になってしまうのは、もはやマリーンズの伝統的な病気といえるだろう。ちなみにチーム本塁打数80本は12球団最下位であった。
 シーズンでもっとも痛感させられたのは、選手層の薄さだろう。確かに前述した選手は活躍はしたのだが、その脇を固める選手や故障者の穴埋めをする選手の力量があまりに劣っていた。143試合を戦うには故障者が出ることは避けられず、実際に投手陣では内が故障し、クローザーの西野が戦線離脱すると、ご自慢の救援陣が一気に崩壊した。
 打線にしてもデスパイネ、角中を除けば、鋭いスイングが見られず、さりとてバントがうまいわけでもなく、足技を使えるわけでもなかった。もちろん何試合かは気力が充実して、逆転や圧勝もあったものの、とにかく持続しなかった。井口、福浦といったベテランも40歳を越え、往年の活躍を期待するのは無理というものだった。
 シーズン当初は首位だったが、やがてソフトバンクに抜かれ、独走を許した。交流戦ではソフトバンクに次ぐ2位で食らいついていったが、交流戦後に日本ハムが14連勝で一気に差を詰め、オールスターの頃には3位に落ち着いていた。
 この年の下馬評では長距離砲イデホがメジャーリーグに去ったとはいえ、選手層の厚いソフトバンクホークスが圧倒的に高く、これに二刀流のスーパースター大谷翔平のいる日本ハムファイターズがこれに続き、他のチームは決め手に欠いて3位争いという声が多かった。実際にこの通りの展開となり、ソフトバンクと日本ハムが競り合いを続け、マリーンズは4位以下のチームにはそこそこ戦い、2位ソフトバンクとは12.5ゲームとも4位西武とは8ゲームと大きな差のある3位を確保した。
 ソフトバンクと日本ハムとの競り合いは、終盤までもつれ、大谷の神懸かり的活躍もあって日本ハムが抜け出し優勝した。
 マリーンズは最終的に3位が確定し、チームの功労者であるサブローの引退試合は気楽な消化試合のお祭り的雰囲気で無事に開催できた。
 シーズンが終わり、石川が最優秀防御率、角中が首位打者を獲得した。デスパイネも打点王の可能性があったが、怪我での欠場が響いた。
 マリーンズとしてはお家芸の短期決戦で、ソフトバンクと日本ハムを撃破するしか、シーズンの不名誉を回復するしかなかった。過去、マリーンズはファーストステージの敗退がないこと、3位からの日本一の実績があること、故障者続きだった救援陣に人材が戻りつつあることなどをより所にして、ソフトバンクとのファーストステージに挑んだ。第1戦は先発に涌井を立て、初回に本塁打2発で先制するも、終盤に内が四球を連発しで3対4で敗北。第2戦は再び初回に本塁打で先制するも、終盤に救援陣が守りきれず、1対4で敗退した。持てる戦力からすると善戦したといえるが、結局のところ選手層の薄さはどうすることもできず、マリーンズは球団史上初めてファーストステージ敗退を記録することになった。ジンクスだけでは勝ちようがなかったのである。
 来期の展望だが、契約の切れたデスパイネが残留するのかもわからず、監督続投の条件として戦力の補強を要求した伊東監督だが、約束通り戦力補強がなされるのかどうかは不透明だ。第一、親会社のロッテが前年からお家騒動続きで、球団経営の情熱を失っているように見えるのが気がかりだ。球団自身は営業努力もあって、観客動員数はV字回復を果たした。回復をさらに持続するには、優勝を期待させるだけの戦力を整えることだろう。

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